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雑誌「たくさんのふしぎ」 納豆から宇宙まで、世界を探検

たくさんのふしぎ

 「たくさんのふしぎ」は雑誌というより毎月届く絵本といった趣だ。読みやすい絵やイラストを使って、毎号たったひとつのテーマについて描いてある。号ごとに著者もちがい、絵やイラストもその都度最適なクリエーターを選んで描かれている。雑誌らしい点といえば、最後にくっついている読者投稿コーナーぐらいだろうか。

 タイトルが示す通り、中身はいろいろなモノやコトのふしぎを解明する内容で、そのテーマ選びが面白い。

 2月号はノンフィクション作家の高野秀行さんによる「世界の納豆をめぐる探検」。高野さんによると、納豆は日本だけの特殊な食べ物ではなく、世界中にあるのだという。納豆菌は、田んぼでも山でもどこにでもいる珍しくない菌なのだそうだ。日本に近い韓国やミャンマーといったアジアはもちろん、アフリカのナイジェリアやブルキナファソなど遠い国でも食されているらしい。いや、全然知らなかった。そんな各国の納豆事情がコンパクトに紹介されていて、この1冊で世界がぐっと身近になった感じがした。

 本誌ではこのような興味をくすぐる話が毎号取り上げられ、1月号のテーマは何だったかというと「コンクリートってなに?」。納豆からの振れ幅がすごいが、小学3年生から読める子ども向け雑誌に、コンクリート特集というのも大胆な試みな気がする。

 そのほかここ1年のテーマを見ると、チョコレート、山里の暮らし、ハチ、深海魚、ギアナ高地、五島列島のかんころもちと教会、コケ、体内時計、シャチなど何でもあり。もっと遡(さかのぼ)れば、宇宙や音楽、布、料理、手品、色、言葉、乗り物などなど取り上げていないテーマはないぐらいだ。私はもう大人なので興味のある号だけ読みたいが、まだ何に興味があるのかもわからない子どもにとっては、自分の興味を、場合によっては未来を、探すためのガイドブックになりえているのではないか。片っ端から読んでいけば、人生を変える何かに出会えるかもしれない。

 わが家にも子どもがまだ小さいときにお気に入りだった1冊があって、それが世界中の変わった家をタイガー立石の絵で紹介している「すてきにへんな家」という号だった。最後には著者本人の考えたおかしな家まで登場し、子ども心をくすぐる内容になっている。

 今読んでも面白いので、バックナンバーがあれこれ欲しくなるのも本誌ならではだろう。今回「かんころもちと教会の島」号を買ってみた。五島のおだやかな風土の匂いが伝わってくるいい読み物だった。=朝日新聞2022年2月2日掲載