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閉塞する今、無責任で吹っ切る「今だから! 植木等」

 ふつう映画の登場人物には、どこで生まれ、なぜここに来たかという「履歴書」がいるものだ。

 「それがボクには必要なかったわけね。ポーンって出てきて、『なんだ、こいつ?』って言ってるうちに、ワーワー騒いでいるうちに、そのうちどっかへ行っちゃったっていう、ただそれだけの話なわけよ」と振り返るのは、「スーダラ節」などで人気を博した植木等(1926~2007)だ。

 高田雅彦著『今だから! 植木等 “東宝クレージー映画”と“クレージー・ソング”の黄金時代』は、筋金入りの植木ファンが、現在の「閉塞(へいそく)状況を吹き飛ばす」べく書いた一冊。「ニッポン無責任時代」をはじめ7本の映画を選び「こんな胡散臭(うさんくさ)い主人公はいまだかつていない」などと分析し、劇中の歌をすべて紹介する。植木本人や、小松政夫ら付き人へのインタビューも充実。生真面目な植木は「無責任男」のレッテルに苦しむが、やがて吹っ切ったことがわかる。立川談志の注文で、色紙に「人生に責任を持て」と書かされた話もあった。(石田祐樹)=朝日新聞2022年2月19日掲載