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メディアミックス戦略の起源はすでに「戦時下」にあった 「大東亜共栄圏のクールジャパン」など杉田俊介が選ぶ注目の新書2点

「現代思想入門」

 千葉雅也『現代思想入門』は難解で知られる現代思想(ポスト構造主義)の入門書。本書によれば現代思想の神髄は、既成の秩序を逸脱し、差異を肯定し、他者とともに「仮固定的」な新たな秩序を形成することにある。

 それはしばしば誤解される悪(あ)しき相対主義(ポストトゥルース)ではない。無限の成功を追い求める自己啓発でもない。有限な複数の行動によって人生をそこそこの、中庸的な幸福で満たしていくプラグマティックな知性であるようだ。

 高度に理論的な哲学がそのまま世俗的な日常の知恵に反転していく面白さ。膨大な手間暇をかけて食材を煮込み、醸造させ、わかりやすさというより澄明な「うまみ」に達したような舌触りが本書にはある。
★千葉雅也著 講談社現代新書・990円

『大東亜共栄圏のクールジャパン 「協働」する文化工作』

 大塚英志『大東亜共栄圏のクールジャパン 「協働」する文化工作』は中国、台湾、韓国との共同研究を通して、近年のメディアミックス戦略の起源がすでに「戦時下」にあったと指摘。

 戦争と侵略のための宣伝工作は、映画・まんが・アニメも巻き込みつつ、プロと素人、官と民の「協働」で行われてきた。現在はまさに「戦時下」であり、参加型の文化創造が何を隠してしまっているか。大塚の危惧の深さに慄然(りつぜん)とする。
★大塚英志著 集英社新書・1034円=朝日新聞2022年4月2日掲載