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9人の芸術実践を紹介する「カラーフィールド 色の海を泳ぐ」

『カラーフィールド 色の海を泳ぐ』から、モーリス・ルイス《無題(イタリアン・ヴェール)》(1960年、オードリー&デイヴィッド・マーヴィッシュ蔵)。本書の展覧会はDIC川村記念美術館で9月4日まで開催中

 絵は「窓」に例えられることがあるが、これは大きな窓の、決して開けられないカーテンのようだ。上から絵具が流れ、染み込んだ複数の色の帯。さらに全体を濃い藍色が覆う。色を閉じ込めているのだ。美しいのか、シミのようで汚いのか。判断できず、次第に怖くなってくる。自分は何を見つめてるんだろう、と。

 カラーフィールドと名付けられた、米国を中心とした絵画&彫刻の動向。1950~60年代、まだ無名だった芸術家らが互いに影響を受けながら(ここが大事。孤高の芸術家ではない)切り開いていった、というか現実から切り離された、色だけの場所だ。

 本書はそのうちの9名を紹介する。とっくに「終わった」芸術実践であるが、新しく語ることはできる。論考がいい。3本ともカラーフィールドの芸術家らの交流に触れているが、論考執筆者も実は交流している、我々読者と。読むうちに対話が始まり、読者も何かを書くかもしれない。志のある1冊の本があれば、人はページの中で出会うことができる。研究書ではない書籍兼図録は、そうであってほしい。=朝日新聞2022年6月18日掲載