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石原慎太郎さんが書き残した自伝、出版 近づく死に、焦りと向き合う気持ちと 

『「私」という男の生涯』(幻冬舎)

 今年2月に89歳で死去した作家で元東京都知事の石原慎太郎さんが書き残した自伝『「私」という男の生涯』(幻冬舎)が刊行された。

 近づく死への思いを率直に明かし、〈書き物も含めて私がし残していることは眩暈(めまい)するほど多くあるのに、この今に至るまでのことを思い返してみるための時間もすでに乏しいような気がしてならない〉として人生の残り時間が刻々と減っていくことへの焦りをつづる一方、〈有無言わされぬたった一度の体験として迎える自分の死なるものを意識を強め、目を凝らして見つめてみたいものだ〉と、自身の死に向き合う気持ちも記していた。

 政治家と作家という二つの顔を持つ人生を送ってきたことについては〈日本という社会の狭量さは著名な政治家が優れた小説を書くことを許容しない節がある〉と、満たされない思いを吐露しているほか、政治家としての自身について〈自分なりの所存で、端(はた)から見れば議員としては無謀とも言える言動を披瀝(ひれき)しはしたろうが、それは私の感性や肉体の十全な表現たり得はしなかった〉と振り返っている。

 結婚後の女性関係についても率直に記しつつ、最後は〈なんの恩寵(おんちょう)あってか、愚行も含めてかなり恵まれたものだったと思われる〉と人生を総括している。幻冬舎によると、石原さんはこの自伝について、自身と3月に亡くなった妻の没後の刊行を希望し、校正を重ねていたという。(興野優平)=朝日新聞2022年6月29日掲載