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教育の公正の実現に向けた策を提言する『ペアレントクラシー「親格差時代」の衝撃』 藤田結子が選ぶ注目の新書2点

『ペアレントクラシー 「親格差時代」の衝撃』

 家庭と子どもの関わりが注目を集める中、志水宏吉『ペアレントクラシー 「親格差時代」の衝撃』(朝日新書・891円)という題の書が出た。この語は、「親による支配」「親の影響力がきわめて強い社会」を意味する。若者の間では「親ガチャ」という俗語も流行(はや)る。
 著者によれば、現代日本では(1)二世化(2)サラブレッド化(3)格差化が顕在化している。この四半世紀、自民党政権下で世襲でない首相は1人のみ。学力格差、スポーツ格差が拡大し、「できる層」「できない層」の差は家庭背景と強く関連しているという。大阪大教授である著者は、維新の会による新自由主義的教育政策は、公正の原理をないがしろにし、格差や不平等を増大させると指摘。しんどい家庭の子どもを下支えする必要性をわかりやすく解説し、教育の公正の実現に向けた策を提言する。
★志水宏吉著 朝日新書・891円

『「黒い雨」訴訟』

 小山美砂『「黒い雨」訴訟』(集英社新書・1056円)は、国から「切り捨てられてきた」被爆者を20代の記者が追った記録だ。原爆による放射性物質を含む黒い雨を浴び、病気や貧困に苦しみながらも戦後70年以上、「被ばくはなかった」ことにされてきた人たち。国に全面勝訴し、原告以外にも救済への道が開かれたにも関わらず、著者は被ばくの切り捨ては現在も続く、と問題の根深さを投げかける。
★小山美砂著 集英社新書・1056円=朝日新聞2022年7月23日掲載