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スケラッコ「ここは鴨川ゲーム製作所」 心情軽やかに、ほっこり群像劇

©スケラッコ/竹書房

 心身ともに健康でも日々の暮らしは楽じゃない。ましてやどこかに不調を抱えていたり社会的にマイノリティだったりすると、息苦しさは増す。そんなとき、日常からちょっと離れられる場所があるといい。本作におけるゲーム作りはまさにその役割を担うのだ。
 美大を出てデザイン関連の仕事に就いたものの会社に適応できず退職したヨウは、祖母がホームに入居して空いた家に住むことになる。そこで子供の頃に描いた絵を見つけ、ゲーム作りを思い立つ。面倒見のいい従兄(いとこ)のキクが仲間を募り、キクの妻の友達・カナデ、その飲み友達のホーライを加えた4人で、趣味以上仕事未満のゲーム作りが始まった。

 漠然としたゲーム内容が、みんなの協力で少しずつ形になっていく。それ自体が人生の暗喩のようでもある。明示はされないがヨウはADHD傾向があり、キクは足が悪く杖使用者。カナデは職場のジェンダー格差に辟易(へきえき)し、ホーライはゲイで同性パートナーと暮らしている。協力者としてシングルマザーや引きこもりの若者も登場。そんな多様な人々の心情を丁寧に軽やかに描く。誰もが生きやすい真のバリアフリー社会とは?という点でも示唆に富む、ほっこり群像劇である。=朝日新聞2022年11月19日掲載