『自民党という絶望』
今月、岸田文雄首相は同性婚の法制化について問われ、「社会が変わってしまう」と慎重姿勢を示した。変化を拒み続ける自民党政治を象徴する光景だ。石破茂ほか『自民党という絶望』(宝島社新書・990円)は多様な論客が自民党政治の問題を炙(あぶ)り出す。「絶望」は自民党だけの問題ではない。自浄作用を失い、腐敗する政治を許容してきた有権者の問題でもある。多様性に乏しく、国際的競争力も落ちるばかりの現状に絶望することから新たな政治への模索は始まる。
★石破茂ほか著 宝島社新書・990円
『さらば、男性政治』
日本政治が変わらない一因は、女性の本格進出を認めない「男性政治」にある。三浦まり『さらば、男性政治』(岩波新書・1078円)は、「男性政治」を延命させてきた制度や政治風土を解明し、決別の道を探る。著者が女性の政治進出を説くと、必ずその「メリット」を問う声があがってきた。そう問う人も「男性が圧倒的に多いことのメリット」を証明できない。そもそも多様性はメリットのために追求される価値ではない。多様なプレーヤーが政治を担うこと、それ自体が価値だと著者は強調する。
★三浦まり著 岩波新書・1078円
自民一強支配、「男性政治」を打ち破った先によりよい政治が現れるかは誰も確証できない。しかし、まずは政治をより多様なものに変える必要がある。行動を促す2冊だ。=朝日新聞2023年2月11日