早花まこさん「すみれの花、また咲く頃」インタビュー 探究心を持ち人生楽しむ
この人の名前を見ると、宝塚ファンはぴんとくる。
宝塚歌劇団に在団中、専門誌「歌劇」で筆がたつことを証明済みだ。タカラジェンヌの素顔をつづる「組レポ。」の名手。指名を受けて８年間、毎月１ページ、所属の雪組の様子を観察眼鋭くリポートした。スターが舞台で見せないおっちょこちょいな面やクセを描き、目指したのは「ギリギリ失礼」。当時、「書かせていただくのだから」と小説教室で３年間、文章修業した。公演や稽古の合間をぬってである。
東京生まれで祖母、母と３代の宝塚ファンだった。中学高校では文芸部とミュージカル部をかけもちした。「目立たない子でした。宝塚の舞台に立てば自分が変われるような気がした」。小柄でかれん、キレのいいダンスを持ち味に１８年間娘役を全うし、２０２０年に退団した。
在団中は舞台をより良いものにと一生懸命で、日々夢中だった。退団後のことなんて考えられなかった。でも人生はまだまだ続くし、生き方も様々。その後の道を宝塚ＯＧはどう歩いているのか。自らに直結する関心事だ。９人に取材した。
鳳（おおとり）真由さんは国際医療福祉大学に進学した。「ルパン三世」で銭形のとっつぁんを演じた夢乃聖夏（ゆめのせいか）さんは３人の子育ての真っただ中。ベトナムで日本語学校の講師をした人も、台湾でモデルをする人も。
俳優として幅を広げる元雪組トップスター早霧（さぎり）せいなさんらの宝塚時代の葛藤も熱く描く。どれほど宝塚に情熱を傾けてきたか。いかにチャレンジ精神をその後保っているか。登場人物に共通している。
「だれもがもがいて居場所を探していた。壁にぶつかっても探究心を持って人生を楽しもうと。私も文章を書いていきたい」。渾身（こんしん）のタカラジェンヌ解剖リポートである。（文・河合真美江 写真・滝沢美穂子）＝朝日新聞2023年3月25日掲載
