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「ジャングルジム」ほか子どもにオススメの3冊 5人の個性、リアルな思い

「ジャングルジム」

 良太が風来坊のおじさんにだんだんひかれていく「黄色いひらひら」、すみれが姉をいじめた子に“ふくしゅう”しようとする「ジャングルジム」、一平が離婚した父との新たな暮らしと折り合いをつけようとする「リュック」、まみが病死した父のカバンの中にあった色鉛筆で父との思い出を描く「色えんぴつ」、春木がお試し同居にやってきたおじいちゃんを心配する「からあげ」の5編が入った短編集。

 どの物語でも、その時々に子どもが感じたこと、考えたことがリアルに描写されている。それぞれの子どもの個性が浮かび上がるだけでなく、おとなについても、ちょっとした言葉でその人の生きてきた道を伝えている。上質の文学。(岩瀬成子作、網中いづる絵、ゴブリン書房、1540円、小学校中学年から)【翻訳家 さくまゆみこさん】

「起業家フェリックスは12歳」

 12歳のフェリックスは母さんの誕生日にカードを贈ることにした。ところが市販のカードは思ったよりも高かったため、親友のモーが絵を描いた手作りのカードをプレゼントする。母さんは大喜び。おばあちゃんも友だちに広めてくれ、徐々に口コミで広がり手作りカードは大人気に。ネット注文も毎日入るようになり、フェリックスは会社を立ち上げることにした。

 何げないアイデアを起業に結び付け、成功に導いていく様子が面白くワクワクしながら楽しめる物語。(アンドリュー・ノリス著、千葉茂樹訳、あすなろ書房、1650円、小学校高学年から)【ちいさいおうち書店店長 越高一夫さん】

「ニンジンジン」

 ニンジンジンって、なんなんだ? にんじんの形の不思議な生き物を、にんじん大好きうさぎたちが追いかける。あの手この手で捕獲を試みるものの、ニンジンジンは決して捕まらない。さっそうとニンジンウォークで歩いてゆくのだ。

 摩訶不思議(まかふしぎ)なニンジンジンと、どうしても食べたいうさぎたちのコミカルなやり取りがじわりじわりとクセになる。七五調の繰り返しが耳に残って離れない。思わずもう一度読み返してしまう。何とも中毒性の高い一冊だ。(キューライス作、白泉社、1430円、3歳から)【丸善丸の内本店児童書担当 兼森理恵さん】 =朝日新聞2023年3月25日掲載