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「性・カネ・恨」から多角的に明らかにする「統一教会」 高谷幸が選ぶ新書2点 

『統一教会』

 安倍晋三元首相の銃撃事件以来、統一教会に再び注目が集まっている。櫻井義秀『統一教会』(中公新書・1056円)は、同教会について30年以上研究してきた第一人者の宗教社会学者の手による。

 教祖文鮮明の生涯や同教会の歴史的経緯はもちろん、韓国と日本での宣教戦略の違いや日本政治への関与、結婚で韓国に渡った信者女性の声など同教会を「性・カネ・恨(ハン)」から多角的に明らかにする。それにより、「反共」という戦後日本を覆ってきたイデオロギーの影の執行部隊ともいうべき同教会の姿を浮き彫りにしている。
★櫻井義秀著 中公新書・1056円

『マイノリティ・マーケティング 少数者が社会を変える』

 伊藤芳浩『マイノリティ・マーケティング 少数者が社会を変える』(ちくま新書・990円)は、ろう者が使える電話リレーサービスの法制化などを実現してきた当事者団体代表の著作。その経験を活(い)かし、マイノリティが「社会を変える」方法を具体的に示す。その手法は、広報活動、世論形成、要望活動と社会運動の基本に忠実だが、興味深いのは、それを「マーケティング」と銘打ち、より多くの人に届けようとしている点だ。

 著者らの活動のように、社会の変革はマイノリティのニーズに端を発することが少なくない。同時に、その変革手法は、社会課題の解決を目指す多くの人に参考になるはずだ。
★伊藤芳浩著 ちくま新書・990円=朝日新聞2023年4月8日掲載