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映画「交換ウソ日記」主演・高橋文哉さんインタビュー 手書きのやりとりが織りなす「新しい恋愛作品」

高橋文哉さん

書き間違えすら愛おしさ感じる

――原作は、小説投稿サイト「野いちご」にケータイ小説として公開された作品ですが、高橋さんはどのタイミングで読まれたのでしょうか。

 今回のお話をいただいて、読ませていただきました。新しい恋愛作品として残ってほしい作品だなと思いました。僕が瀬戸山を、桜田(ひより)さんが希美をというイメージで読んだのですが、恋愛ものど真ん中な作品でありながら、交換日記というアイテムを通して、どんな返事が書いてあるのかなと相手からの日記を待つ間や、ページをめくる時のドキドキやワクワクする要素が詰まっていて、これまでの恋愛作品とは少し違う部分があるなと感じました。

――「交換日記」が物語のカギを握るアイテムになっていますが、高橋さんは交換日記にどんなイメージがありますか。

 僕が中学生くらいの頃はスマホがまだそんなに普及していなかったので、文字でのやり取りは割と身近に感じてはいたのですが、交換日記はしたことがないんです。なので、少し前の連絡方法というか、掲示板みたいなイメージがあったのですが、学生が気軽に楽しんで使えるアイテムということを今作で知ることができましたし、そういう親しみやすさも魅力的ですよね。

――今はLINEなどデジタルツールでのやりとりが主流かと思いますが、実際に作品の中で交換日記をやってみて、どんなところに良さを感じましたか?

 同じ文字を書いても、たまにちょっと形が変わったりするじゃないですか。そういうところに生まれる感情表現が文字にはあると思いました。相手が文字に吹き込む感情は見えてはこないけど、デジタルよりも感じ取れるものがあるし、書き間違えたところをクシュクシュって消すことすら、愛おしく思えるんです。

――手書きだと「あ、この人はこんな字を書くんだな」という相手の知らなかった一面が見えますよね。

 僕は桜田さんが書いた文字を見ながら返事を書いたので、そこから受ける印象で、瀬戸山としてこんな風に伝わればいいなというものを、お芝居以外の字でも表現できたらいいなと思っていました。相手の字面から受ける印象はもちろん、自分が与える印象も意識しながら演じました。

©2023「交換ウソ日記」製作委員会

――意外にも、恋愛映画でこういう役は今作が初めてだそうですが、瀬戸山をどう演じようと思いましたか。

 恋愛映画の主演も初めてだったので、素直にうれしかったです。瀬戸山の第一印象は、クールで少し大人びているような男の子だったのですが、台本を読んでいく中で、自分の好きなものには全力だったり、自分の言いたいことはしっかりと伝えたり。そういう中にも、無邪気で素直なところもあることを知り、そのギャップが瀬戸山の持つ要素のひとつでもあるなと思ったんです。自分のお芝居でそこを伸ばせるように、瀬戸山の持っている魅力を余すことなく届けられるようにしようと思っていました。

――学園青春恋愛ものということで胸キュンシーンがたくさんありましたが、高橋さんが特に思い出に残っている「キュンシーン」はありますか。

 瀬戸山が希美のほっぺを「ムニュ」ってするシーンがあるのですが、そこは2人にとって大きなターニングポイントというか、大事な瞬間でもあるんです。普通はそんなことしないけれど、それをどれだけナチュラルに、心情的に寄り添って希美に届けるかということを、キャストやスタッフのみなさんと話し合いながら、試行錯誤を重ねて取り組んだシーンでした。

©2023「交換ウソ日記」製作委員会

日記に感情を吹き込めるように

――映画を見て、日記や手紙の文面を声に出している瀬戸山のモノローグを聞いた時、原作を読んだ印象よりも、もっと男っぽいなと感じました。

 日記に書いてある文章に自分の声がのった時に、しっかり感情を吹き込めるようにしたかったので、瀬戸山が自分の思いや願望を伝えるときは、強さや真っすぐさを特に伝えたいなと思っていました。自分の映像を見てそこに声をのせることもあったのですが、現場で感情を持ってお芝居したところにもう1段階、命を吹き込める感覚がすごく楽しかったです。

――台本の表紙に好きなセリフをいろいろと書き込まれていたと伺いました。特にお気に入りだったのは?

「俺のこと知ってほしい」ですかね。「すごっ‼」って思いました(笑)。

――確かに(笑)。自分に自信がないと書けない言葉ですよね。

 好きな人には自分のことを知ってほしいし、知らないという理由だけじゃ諦めきれない気持ちも分かるんです。自分本位にも思える言葉なんですけど、あんなに真っすぐに伝えられるのは、相手とちゃんと向き合おうとしているからなんですよね。

©2023「交換ウソ日記」製作委員会

――「17歳って子どもじゃないけど大人でもない」という希美のセリフがありましたが、高橋さんが17歳のころはどんなことに不安や悩みを抱えていましたか?

 僕は特別何かに悩んだことはなくて、働くということに生きがいを感じていました。それまでは自分で稼いだお金は1円もなくて、たくさんの人に助けられてここまで大きくなったので、高校1年生の時、初めて自分が働いてお給料をもらった時の感動は一生忘れられないです。

いつか自分の人生を文字に残したい

――以前、「自分が悩んで学んだことはノートに書き留めたり、台本に書いたりするのをデビューのときから続けている」という記事を見たのですが、高橋さんにとって「書くこと」はどんな意味を持つのでしょうか。

 書くこと自体が好きなんですよ。例えば、何かに挫折して、どうしていいか分からなくなった時に、これまで書き残したものの中に答えがあるかもしれないと思うと、書いておいて損はないかなと思うんです。

 デビュー当時は「今日はこういうことを言われて悔しかった。じゃあ、どうやって頑張ればいいか」とか「こういう言葉をかけられて救われた」とか、誰かに言われたことやそれによって自分はどう思ったのかを書いていました。今でもたまに見返すことがあるんですけど「声はお腹から出す」といった役者として基礎的なことも書いていて、「確かにそうだな」って再確認できることもあるので、それが今の自分にも活きているのかなと思います。

――「初心忘るべからず」ですね。

 最近はそれが日記に変わったので、いつかエッセイにつながったらいいかなと思っています(笑)。

――書くことがお好きとのことですが、普段、読書はしますか。

 今まではあまりしなかったのですが、台本以外の文章からエネルギーをもらいたいなと思うことがあって、最近本を読み始めるようになりました。フィクションよりも、その人の人生を描いた本や、エッセイを読むことが多いです。まだ漠然とですが、先ほどお話したエッセイも、生きている間に出したいなという願望があって。自分の人生を振り返って、文面にして残すことってすてきだなって思うんです。