『宇宙・0・無限大』
どこまでも広がる星空を見上げて、「無限」の不思議さに思いをはせた経験は誰にもあることだろう。一方、ゼロという数字は無限に比べればずっと日常的に使われるが、よくよく考えれば恐ろしく扱いの難しい、特殊な存在だ。谷口義明『宇宙・0・無限大』(光文社新書・902円)は、実のところこの宇宙に無限大やゼロというものが存在しているのかという、シンプルにして遠大な問いに挑んだ一冊。素粒子の世界から宇宙の果てまで、宇宙の始まりから終わりまでを、難しい数式などを用いずに平易にさらりと説いてゆく、著者の手腕が見事だ。
一方、この地球の深海も、まだまだ未知のベールに包まれた世界だ。しかし最近の技術の進歩と研究者たちの努力により、この深海底の様相がようやく明らかになりつつある。
★谷口義明著 光文社新書・902円
『DEEP LIFE 海底下生命圏 生命存在の限界はどこにあるのか』
稲垣史生『DEEP LIFE 海底下生命圏 生命存在の限界はどこにあるのか』(講談社ブルーバックス・1210円)は、この海底下の生命圏を追い求めた研究者による熱い記録だ。海底からさらに2500メートルも掘り進んだ先にも生命がすんでいるし、1億年もの間じっと海底に潜んで、復活の時を待つ微生物もいるという。一見地味に見える微生物たちの、計り知れない能力に改めて目を見張らされる。
★稲垣史生著 講談社ブルーバックス・1210円=朝日新聞2023年6月24日掲載