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高校生たちの熱量満点な恋と青春を追いかける「オルタネート」 吉田大助が薦める新刊文庫3点

吉田大助が薦める文庫この新刊!

  1. 『オルタネート』 加藤シゲアキ著 新潮文庫 990円
  2. 『昨日星を探した言い訳』 河野裕著 角川文庫 946円
  3. 『海がきこえる2 アイがあるから〈新装版〉』 氷室冴子著 徳間文庫 1045円

 恋愛を書くことは、運命を書くことだ。

 吉川英治文学新人賞を受賞した(1)は、高校生限定のSNSアプリ「オルタネート」が必須となった世界で、高校生たちの熱量満点な恋と青春を追いかける。遺伝子レベルの解析により他者との相性を数値化してくれるオルタネートは、運命の別名だ。それを受け入れるか、はねのけるか、変化するよう試みるか。三人の主人公を立てた群像劇形式により、運命に対する態度の違いが鮮明化する。群像劇名物“全員集合”を、意外な形で実現したクライマックスは快感の極み。

 気鋭作家が初めて手がけた恋愛小説である(2)は、全寮制の中高一貫校が舞台。生徒会を牛耳り学園を表立って支配しようとする少女と、「清掃員」なる非正規団体のボスとして暗躍する少年の、知られざる交流と絆を描き出す。惹(ひ)かれ合っているにもかかわらず、離れ離れになってしまったのは何故(なぜ)か――。二人にとって恋愛は、人生のままならなさの象徴である。

 新装版刊行された(3)は、スタジオジブリがアニメ化したことでも知られる同名小説の続編だ。前作と異なり、恋のときめきはほぼ介在しない。一九九〇年代後半の東京で、恋をしたがゆえに傷つき傷つけ、不機嫌になり、人生の舵取(かじと)りが「むちゃくちゃ」な状態に陥った若者たちを活写する。その先で、アイ(愛)にまつわる真理が顔を出す。

 人は、恋を通して運命なるものの存在を知る。運命の恋、という定型表現の、真の意味はそこにあるのだ。=朝日新聞2023年7月29日掲載