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Aマッソ・加納愛子さんエッセー集「行儀は悪いが天気は良い」 おっさんの「アホの手土産」愛でる日々

加納愛子さん

 お笑いコンビ「Aマッソ」の加納愛子さんが、エッセー集「行儀は悪いが天気は良い」(新潮社)を刊行した。芸人になるまでの日々や仕事への愛を、軽妙につづっている。

 「おもしろい人に囲まれてたんですね、と言われることが多かった」と加納さん自身が話す通り、クセの強い登場人物が次々と出てくる。子供の頃、大阪の実家には、父親が「飲み屋で会うた」おっちゃんがしょっちゅう遊びに来た。顔ぶれは日によって違う。テレビの音が聞こえなくなるくらい大きな声でしゃべって帰っていくおっちゃん。突然、移動式屋台を家の前まで引っ張ってきて「ラーメン屋始めて~ん!!」とはしゃいでいたおっちゃん。「○○荘」とマジックで書かれた便所用スリッパを履いているおっちゃん……。

 〈うちに来るおっさんの手土産はみんな「アホ」だった〉とツッコミを入れつつも、その手土産はいまもあたたかく残り続けている。〈社会に出て、正しさを軸に物事を堅苦しく判断してしまいそうになったとき、いつもおっさんたちのことを思い出す〉

 「やっと書けた」と話す1編「ねこが好き」では相反する感情に葛藤する。猫が好きで、でも同時に猫のかわいさにおびえてもいる。かわいい。かわいくて嫌気がさす。「かわいい」という感情を抱かないと生きていけない自分が怖い。でもやっぱり、子供の頃に実家で飼っていた猫はかわいくて幸せだった。矛盾した自分が嫌いで、好き……。一言では言い切れない心情をただただつづっている。

 月刊誌「小説新潮」での連載だった。「書く場所があって、読んでくれる人がいたからこそ、記憶の作業ができました」と語る。

 一冊のなかで通底しているのは、おもしろがる姿勢だ。「ライブやYouTubeの企画をするときも、この人のこういうところをおもしろがったらどうなるだろう?と常に考えている。現象にも他人にも、興味を持つとおもしろく見えてきます」

 テレビやラジオ、YouTubeと多くの媒体で活躍するなか、加納さんは自身のSNSアカウントを作っていない。「結果がふるわなかったときに言い訳をする媒体を作りたくないんですよね。それに、きっと好かれようとしてしまう。SNSは自分の印象を決めるだけの作業な気がしています」。芸人としての姿は、しゃべりで、文章で、芸を通して伝えていく。(田中瞳子)=朝日新聞2024年1月17日掲載