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国際システムとして論じる「冷戦史」 高谷幸の新書速報

『冷戦史(上・下)』

 ソ連崩壊を伝える新聞の見出しが、それまで見たことのないほど大きかったことを今も覚えている。黒地に白で刻印された太字は、当時小学生だった評者にもその崩壊の衝撃を伝えた。
 青野利彦『冷戦史(上・下)』(中公新書・上990円、下968円)は、国際関係史からみた冷戦の通史である。米ソ超大国、ヨーロッパ、東アジア、第三世界の四つの地域を軸に、イデオロギーと地政学的対立、地域の政治力学が地域内・地域間で相互作用しながら展開された国際システムとして冷戦を論じる。

★青野利彦著、中公新書・上990円、下968円

『限界分譲地 繰り返される野放図な商法と開発秘話』

 冷戦は、国家間関係だけでなく、人びとの生きる環境をも規定した。
 冷戦期、沖縄を除く日本本土は、米国の軍事戦略の下、安全と経済発展を享受した。そのなかで人びとが富の蓄積・増殖の対象として見いだしたのが土地である。吉川祐介『限界分譲地 繰り返される野放図な商法と開発秘話』(朝日新書、957円)は、一九七〇年代からバブル期にかけて投機を当て込み、インフラ整備も不十分なまま開発された超郊外の分譲地に焦点を当てる。当時の無謀な開発は負の遺産となり私たちの今を縛っている。一方、その困難を認識しつつ、「限界分譲地」に自ら暮らす著者の冷静な筆致は、冷戦期とは異なる価値観を映し出しているようにみえる。

★吉川祐介著、朝日新書・957円=朝日新聞2024年1月27日掲載