BL担当書店員が選ぶ「現実逃避できる異世界転生BL」
尊すぎる転生恋物語（井上將利）
ついにBLでも異世界転生モノに触れることになろうとは……。ということで、2月のテーマは異世界転生BL！ 実際、少し前から異世界要素を含んだBL作品が増えてきたな～と肌で感じてはいたのですが、なかなか守備範囲を広げられずおりました……。そんな中「こ、これだーっ！」と思う作品、佐久本あゆさんの「転生アイドルとドルオタの騎士」（フロンティアワークス）に出会うことが出来ました！
【あらすじ】
今世は共にあると誓います
転生を繰り返し、現在は会社員として生きる元騎士の貴生。アイドルの洸が前世で護り切れなかった王子の生まれ変わりだと知り、「今世こそは護り抜く！」と彼を推すことに決める。より近くで護るためマネージャーになった貴生だったが、前世よりクールな彼が自分だけに見せる笑顔に、忠誠心を超えた特別な感情が芽生えはじめ…！ 「転生アイドルとドルオタの騎士」作品紹介より
まずタイトルからしてワクワクしちゃいますが、同時にこの表紙のインパクトよ。圧倒的ビジュアルの「圧」が凄い！（この時点で既に神々しい！） きっと表紙買いした人も多いのではないでしょうか。
本作ははるか昔に生きた王子と彼に仕えていた騎士が現世に生まれ変わり、再び出会うというお話なのですが、あらすじにサラッと書かれている通り、なんと彼等は「転生を繰り返して」いるのです。特に前世で主である王子を守れなかった後悔を背負う騎士は四つ葉のクローバー（人じゃない！）から始まり何度も転生を繰り返しついに日本のアイドルとマネージャーという位置関係で再会するわけです。何という想いの強さだろうか……。そんな元騎士である貴生の溢れんばかりの想いが随所に感じられます。
そして別人でありながらも前世の王子の面影を感じさせてくれる洸の笑顔がようやく見れた瞬間。貴生だけでなく多くの人を魅了した場面はグッとくるものがありました。
そんな、時を超えた壮大な出会いの物語でありながら軽快なノリツッコミがとっても楽しいギャップを生み出していて終始楽しく読むことができる作品です（洸が襲撃される場面は思わず笑ってしまいました……ｗ）。
変わらぬ愛情を持ち続けた一途な元騎士とその思いを受け止め続けた元王子のひたすらに尊い物語を笑顔で楽しめますので、是非お手に取って頂けたら幸いです（そして現在続編も連載中！）。
これは妄想なのか、現実なのか（原周平）
2024年最初のテーマは「現実逃避できる異世界転生BL」ということで、BLを読むときは基本的に現実逃避していますが（笑）、中でも主人公に同調してどっぷり妄想に浸れるこちらの作品を紹介させていただきます！
灰音さん「BL漫画の悪役令息に転生したら子持ち聖騎士への妄想が止まりません」（少年画報社／大都社）。
主人公はBL作家・ハレン チリコ先生の担当編集をしている高階祐介。居眠り運転のトラックにはねられ、次の瞬間にはなんと先生の代表作「白銀のバラと聖なる騎士」(通称「バラ騎士」)の悪役令息・レイナードに転生していたのでした！ 原作スタートの6年前の世界ではあるものの、レイナードは作中ではかませ役で、受けの主人公・キリアンに執着した結果、攻めの主人公・ハルバートに倒されてしまう運命……。祐介は死亡エンドを回避できるのか――。
と思いきや、実はレイナードはキリアンの父であり聖騎士のアレクシスのことが好きだったという裏設定があったらしく!? キリアンの家庭教師となったレイナード（祐介）は、アレクシスと会うたびに妄想爆発で脳内で襲いまくっちゃいます。しょっちゅう妄想があふれ出すので、これはリアルなの!? と思わせてやっぱり妄想！ という繰り返しに、結構エロエロでドキドキしながらも笑っちゃいました（笑）。
日に日に高まる劣情を必死に抑えながら、悪役化から逃れるために奮闘する中、アレクシス＆キリアン親子との親交も深まっていきます。段々と育っていくアレクシスへの気持ちはレイナードのものなのか、それとも祐介自身の純粋な感情なのか……。レイナード（祐介）とアレクシスの2人が互いに少しずつ絆されていく様が可愛らしいです。
周りに華やかな花が舞うのが似合う高潔なイケメンパパ、アレクシスの見せるこの表情……たまりませんね!! これは妄想？ それとも現実!? ぜひその目で確かめてみてください！
本作、本当に作画が素敵で、アレクシスの美しさはもちろん、ファンタジー世界の細かな舞台や衣装の見ごたえがすごいところも魅力の一つ。個人的には一番堪能してほしいのはアレクシスの肉体美ですが（笑）。
祐介の立場が危うくなる事件も起こりますが、ちゃんとハピエンを迎えられて良かったです！ 祐介の行動が原作にも影響を及ぼしていているようで、1巻にぎゅっと詰まった物語ですが、その先の2人にどんな未来が待っているのか、この世界がどう変わっていくのか、いつか続きが読みたいです……！ それまでは自分も妄想で楽しむことにします（笑）。
