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「SSSS すぎむらしんいち短編集」 俗っぽくリリカル、人間味の7編

©すぎむらしんいち/小学館

 昔はどの雑誌にもよく読み切り短編が載っていたものだが、昨今はあまり見ない。そんななか本書のような短編集は貴重である。巻頭作「The End of The End of The World」は、交通事故から女性を救うついでに人類滅亡につながる大爆発を阻止しようと何度もトライする男の奮闘を描くタイムループもの。わずか26ページに凝縮された劇的な展開と鮮やかな結末には拍手喝采するしかない。

 B級SFホラー風味の「nUMA」「Light my ハートに火をつけてfire!」、中年漫画家の悲哀を描いた「夜明けの漫画描き」、朝ドラと浪人生の心理を重ね合わせた「あさぼらけ」、作者自身の高校時代を一部モチーフにしたと思(おぼ)しき「1983」など、全7編を収録。いずれも俗っぽさとリリカルさが同居して、どうしようもない人間味にあふれる。

 前作『最後の遊覧船』を読んだ人なら「あさぼらけ」と「The End of~」の人物名にニヤリとするだろう。セリフや背景、小物に仕込まれた細かいネタ、「夜明けの漫画描き」と「1983」がつながっていたりする仕掛けも楽しい。カバーを外した表紙絵も必見。作家からすれば連載に比べて効率は悪いと思うが、こうした短編をもっと読みたい。=朝日新聞2024年2月17日掲載