「季刊Be!」は、アルコール問題をテーマに1985年に創刊された雑誌。今では虐待やうつ、アダルトチルドレン(AC)、発達障害なども含めた幅広いテーマを扱う。
最新号の特集〈脳にとって「痛み」とは感情だった!〉が気になって手にとった。私自身、慢性的な痛みを抱えて生きており、治らない痛みとどう向き合っていけばいいのか、ずっと悩んできた。
痛みが感情だったら何が変わるのだろう。本記事によると《感情だからこそ、同じ刺激を受けても感じ方が違う》、そのため「痛みの認知を変える」ことがカギになるという。《痛みをなくそうとするのではなく、痛みとともに生きていく、という考え方に切り替え》るのだと。きれいごとのように感じるかもしれないが、現実問題そうやって半ば諦めることで、私もかなり救われている。そのためのコツなども書かれていたが、深くは言及されてはいない。
そこは物足りなさもあるものの、専門書ではないと自ら公言しているように、重いテーマを扱いながら、カジュアルな雰囲気なのは読みやすく、その軽みのおかげで深刻にならずに読み進められる利点もある気がした。
シリーズ〈「生きづらさ」支援の現場を歩く〉で取り上げられていた「夜のユースセンター」が興味深い。夜、家に帰りたくない若者を受け入れる居場所で、就労の目標などはなく《スタッフは利用者を見守って話を聞き、本人にやりたいことができたら、実現できるよう手伝》うというスタンスに救われる人は多いだろう。
そのほかネット中傷被害にあったスマイリーキクチさんのインタビューや減酒に関する記事もあるが、一番目につくのは読者の声だ。
特別企画の〈死にたい気持ちと一緒に生きていく〉でも、読者の生の声が載せられていて、解決策はこうだとか、どうすべきだとか、正解は書かれていないのだが、悩みを抱えている人にとっては、同じように悩んでいる人の言葉が何よりの処方箋(せん)なのかもしれない。=朝日新聞2024年4月6日掲載