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成立過程の研究通し、再生を提示する「町内会」 高谷幸の新書速報

  1. 『町内会 コミュニティからみる日本近代』 玉野和志著 ちくま新書 924円
  2. 『電車で怒られた! 「社会の縮図」としての鉄道マナー史』 田中大介著 光文社新書 1100円

 多くの見知らぬ人が集まり、暮らすことで生じる問題がある。例えば、ゴミ集積所の管理や地域の防犯などである。こうした公共財の供給は政府の役割とされるが、日本では、その一部は全戸加入を原則とする町内会が担ってきた。

 (1)は、町内会の成立過程と意味を、長年その研究に携わってきた著者が論じた著作だ。町内会、特に都市の自営業者層によって担われてきたような会は、行政による統治性の手段であると同時に、労働者層から社会移動したかれらが自治と自律に関与し、ひとかどの存在として認められる階級的な組織としての側面も有した。この点で町内会は、大衆民主化の時代に欧米の労働組合に相当する機能を果たしたという。その上で、その基盤が失われてしまった現在における町内会のあり方を提案する。

 見知らぬ人々が集まる空間には、電車の車内もある。(2)は、車内がしばしば「社会の縮図」として認識されてきたことに着目し、そこでの規範の変遷を追う。時代により交通道徳、エチケット、マナーという呼び名とその含意は変化しているものの、車内秩序は規範によって統制されてきた。特に今日の都市部の電車では、規範に対する乗客の感度が繊細になり、かれらの不機嫌の表出にもとづく微細なモニタリングを通じて、より高度化した規範がさらに求められるというフィードバックが生じているという。不自由だが秩序だった空間は、確かに日本「社会の縮図」かもしれない。=朝日新聞2024年7月6日掲載