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「ルポ年金官僚」書評 地味な政策決定の過程を公平に記述

評者: 酒井正 / 朝⽇新聞掲載:2024年07月13日
ルポ年金官僚: 政治、メディア、積立金に翻弄されたエリートたちの全記録 著者:和田 泰明 出版社:東洋経済新報社 ジャンル:福祉

ISBN: 9784492224168
発売⽇: 2024/04/10
サイズ: 19.5×3.1cm/448p

「ルポ年金官僚」 [著]和田泰明

 年金制度の改正は国民の生活に直結するため、政治的に大きな反響を引き起こしやすい一方で、制度に関わる数理的な議論は地味にならざるをえず、マスコミは著名人の年金未納といったわかりやすいスキャンダルの方に飛びつきがちだ。本書は、その地味な政策決定の過程を、丹念な取材から公平に記述している。
 政策は様々な人びとの綱引きによって決まっていく。だが、それらは断片的なニュースからは見えにくい。本書には、「100年安心」や「マクロ経済スライド」といった混乱の素(もと)ともなるようなネーミングが登場してくることになった裏面史も記されており貴重だ。
 とはいえ、本書の主人公はあくまで官僚だ。著者は、かつての官僚を、矜持(きょうじ)を持って自らの意見を述べる存在としてややヒロイックに描くのに対して、取材に対して公式見解しか述べなくなった最近の姿を口惜(くちお)しがる。誰もがSNS上で本音をつぶやいているように見える時代に、官僚だけが自分の意見を語らなくなっていることを我々はどう捉えるべきなのだろうか。