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〈オススメ〉細田昌志「力道山未亡人」

 戦後のヒーローだったプロレスラー力道山が、ヤクザとのけんかが原因で死亡したのは1963年の暮れだった。妻の敬子さんは22歳で身重だったが、五つの会社の社長を引き継ぐことになる。現在の額にすると30億円にもなる負債と共に。

 小学館ノンフィクション大賞受賞作。敬子さんの少女時代から白髪となった現在までが、徹底した取材を基に描かれる。敬子さんの実像と波乱の生涯が、ここまで明らかになるのは初めてだ。

 力道山の出自、プロレス界と裏社会のかつてのつながりも、時代の検証になっている。

 プロレスファンが興味を持つのは、アントニオ猪木にかかわる記述だろう。「亡夫が弟子の中で最も寵愛(ちょうあい)した」とあり、これまでのプロレス史がガラリと変わる新事実も示されている。(西秀治)=朝日新聞2024年7月13日掲載