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いぬいさえこ「きみのそばに いるよ」 今のままでいいと安心できる

 子どもにとって、世界はどう見えているのだろう。新しいことに出会う喜びもあれば、知らないことに向き合わなければならない不安もある。毎日が楽しくて仕方のない子もいれば、ただただ果てしないと感じてしまう子だっている。子どもによって、世界の捉え方は様々なのだ。

 だからこそ、絵本の在り方も同じであって欲しいと考える。笑わせてくれる、好奇心を刺激してくれる、勇気をもらえる。前に進もうとする子どもたちにとって、これらの要素はもちろん重要だ。一方で、読んでいるだけで安心できる、今のままでいいと思える、そんな時間を生み出すことも、絵本の大きな役割となる。

 小さくてふわふわの動物たちが悲しんでいる子や立ち止まっている子に優しく語りかける絵本『きみのことが だいすき』は、この絵本に先駆けて発売された。シンプルで普遍的だけれど「人の痛みに寄り添いたい」という作者の切なる思いが込められた言葉を声に出して読んでいると、目の前で奮闘する我が子の姿が浮かび上がってくる。「そのままでいい」と思っていたとしても、それを実行し、伝えることは難しい。「こんな言葉をかけてもらいたかった」「心が軽くなった」という声とともに、瞬く間に多くの読者に受け入れられていく。

 『きみのそばに いるよ』の月の満ち欠けに沿って描かれた絵とメッセージは、より具体的に心の中の不安や迷う気持ちを掘り下げていく。何度も繰り返される「だいじょうぶ」「安心して」という言葉の響きは、子どもたちだけでなく、大人の心も穏やかにしていく。

 生きづらさを感じることの多い今の時代。「どんな時もそばにいてくれる」、この絶対的な安心感こそが求められている感覚であり、この絵本がその役割を担ってくれているのだろう。=朝日新聞2024年7月20日掲載

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 パイ インターナショナル・1540円。23年8月刊。3刷12万部。10刷39万部の『きみのことが だいすき』の第2弾。大人にも人気で、「苦しいつらいことが多い世の中で、つかの間の癒やしとなっているのでは」と担当者。