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「七月の波をつかまえて」ほか子どもにオススメの8冊 夏休み、わくわく探して

 いよいよ始まった夏休み。この季節にぴったりな本を4人が選びました。(☆=新刊、★=既刊、価格は税込み)

☆「七月の波をつかまえて」(岩波書店)

 もうすぐ13歳になるジュイエは、パパが出ていってからうまくいかない。いろいろなものが怖いし、仲良しのファーンとモールをウロウロするだけの閉じた生活を送っている。ママに連れ出された旅先でキラキラのサーファーガール、サマーと出会い、夏の名前を持つ2人の最高に輝かしく、切ない物語が始まる。光る世界に飛び出して、夏をつかまえたくなる(ポール・モーシャー作、代田亜香子訳、2090円中学生から)【丸善丸の内本店 兼森理恵さん】

★「カメくんとイモリくん 小雨ぼっこ」(偕成社)

 「さわ」でおとなりどうしの、カメくんとイモリくん。突然の大雨でイモリくんの家は流されてしまい、引っ越すことに。あたたかくなり、さわに遊びにきたイモリくんを大喜びで迎えるカメくん。おとなりどうしだった頃と同じような毎日を過ごせる幸せ。来年の夏も変わらない2人でいられますように。あたたかな関係性がじんわりしみてくる(いけだけい作、高畠純絵、1320円小学校中学年から)【丸善丸の内本店 兼森理恵さん】

☆「ときの鐘」(ポプラ社)

 江戸時代の時を知らせる鐘をめぐる絵本。将軍にあいさつするため長崎から江戸にやってきたオランダ人植物学者ヤンと、鐘つき役の孫である新吉が出会い、友達になる。行動の自由がないヤンのために新吉は魚屋に舟をこいでもらい、さまざまな庭園を案内する。当時の街並みや人の様子がていねいに描かれ、楽しい。ヤンが新吉の祖父にもらった鐘が、300年後の今もオランダの街で鳴っているという設定に想像が広がる(小林豊作・絵、2200円小学4~6年)【翻訳家 さくまゆみこさん】

★「野遊びを楽しむ 里山百年図鑑」(小学館)

 春・夏・秋・冬四季折々の里山で見られる動植物を魅力的な絵で見せるだけでなく、草や実を使ってできる遊びや料理、虫や動物の見つけ方、とり方や飼育方法、スケッチの方法なども紹介している図鑑。楽しく見たり読んだりしているうちに、実際に外にとび出して、もっと自然とつきあってみたくなりそうだ。本書を入り口にして、夏休みに親子や仲間で里山を楽しんでみてはいかが(松岡達英作、2420円小学生から)【翻訳家 さくまゆみこさん】

☆「もののけdiary」(岩崎書店)

 不気味でおかしな妖怪尽くしの30日間。連日家に現れた化け物たちとの交流を肝の据わった少年・平太郎が回想します。「つづらおおがえる」や「みみずあたま」らが繰り出す気色の悪いあの手この手も軽く受け流し、夜もぐっすりの超然ぶり。江戸時代から絵巻や小説、絵本にも度々翻案されてきた「稲生物怪録(いのうもののけろく)」を新機軸で。キャラが立つ妖怪のカラーページを開くと白描の情景が現れる、片観音の仕掛けも趣深い(京極夏彦文、石黒亜矢子絵、2200円小学校低学年から)【絵本評論家 広松由希子さん】

★「おばけバースデイ」(絵本館)

 「ぬお~」と雨どいから出てきたのは、ののくび。石垣の隙間からは、ぎたろうが「ひゅーう」。花やプレゼントを片手に、みんなウキウキどこ行くの? へんてこなオリジナルおばけの造形に、ネーミングがしっくりマッチ。排水溝や自動販売機など、身近にひょっこりいそうな親しみやすさです。怖いはずのおばけを怖がらす逆説的サプライズもゆかい。幼い子から笑顔で読めるおばけ絵本(佐々木マキ作、1320円2歳から)【絵本評論家 広松由希子さん】

☆「すいぞくかんであいましょう」(BL出版)

 絵本のすいぞくかんが開館です。水の中でくらす生きものたちが次々と登場。どの生きものたちも力強いタッチで描かれていますが、その表情はユーモラスで心が癒やされます。圧巻はゴマフアザラシがたちおよぎをしている場面です。また、生きものたちの命を支えている飼育員たちにもスポットを当てて描いているところは興味深く、すいぞくかんに足を運んでみたくなりますね(こしだミカ作、1760円5歳から)【ちいさいおうち書店店長 越高一夫さん】

★「バッテリー」(教育画劇)

 今年も高校球児たちの熱い夏がやってきました。この時期になると読みたくなるのがこの本です。天才的なピッチャーの巧と、その相棒となるキャッチャーの豪が中学入学前の春休みに出会うところから物語は始まります。バッテリーを組むことになった2人が絆を深めながら成長していく様子が、テンポよく描かれているので、読みだしたら止まらなくなります(あさのあつこ作、佐藤真紀子絵、1540円小学校高学年から)【ちいさいおうち書店店長 越高一夫さん】=朝日新聞2024年7月27日掲載