これは小さな町の小さな物語。
ここはルプエンチールという小さな小さな森の村。
ここでは、森が散らばっており森ごとに村が作られていた。
3つの森村がルプエンチールというひとつを作り上げている。
1つ目の森村はバナナの木やヤシの木で囲われたなんとも南風吹きたくなるような森。
2つ目は大きなクスの木で守られた、優しい森。
そして3つ目はもみの木が高さで勝負し合う高々とした森。
この3つの森村で小さな生活が穏やかに送られていた。
地球を生きている人間とはまた違い、
もみの木の住人たちは10〜15cmくらいの身長だ。
そしてその中でももみの木村では、
ひと山抱えていた。
「だから言ってるじゃないか!僕らはずっとここに住んでいるんだから移動するわけがない!」
そう声を森中に張り巡らせるのは、
もみの木住人のタライラ。
真上に向かって叫んでいる。
「なら何故こんな汚すんだ!こっちはなぁ、あんたらの屋根じゃないんだよ」
今度、その返にと叫んできたのは高い高い見上げた先にあるもみの木のルッパス。
そう今、この村森では土台ともなるもみの木と、古くからの住人たちで対立が起きているのだ。
ことの発端は、1週間前の夜8時のことだった。
もみの木の住人たちは、
ここ最近ゴミは放置し放題、もみの木の根元を引きちぎるなど礼儀がなっていない住人の緩みがもみの木たちの問題になっていた。
「なぁ、ルッパス、最近やたらと根元が重いんだ。なんか変な感染病にでもなっちゃったのかな。」
と一本のもみの木が、リーダーであるルッパスに打ち明けた。
「トットラ、大丈夫か?確かに最近ゴミだらけで根元がやられちまってるな。水が根元に行き渡ってねぇのかもな。。おーい、ミシルたちのほうはどうだ?」
とリーダーのルッパスは、反対側のもみの木たちにも声掛けをした。
「ルッパス、こちらもダメ。昨日なんてヤーライの根元を住人の子供たちがむしっちゃって。傷になっちゃったの。どうにかしてほしいわ」
もみの木たちは地上から20m近くある高さでカサカサと話し合っている。
そうそれは、最近のもみの木村に住む住人たちの暮らしの汚さは深刻にもみの木たちを困らせていた。
「実は、140年前にもこんな住人たちがいたんだ。俺たちの根元は住人たちのゴミ置き場にされてな。お前たちはまだ小さかったから覚えてないだろうけど、その時も大変だった。
でも今回は実際に具合を悪くしている木も増えてきたからな。また立ち上がるしかないな」
リーダーのルッパスは強く気持ちを固めたように鉄の顔付きになった。
そんな話し合いがあった翌朝、ルッパスは決意をし代表して、この村の村長であるタライラを呼び出したというわけだ。
タライラは堂々ともみの木に肘をつき、小生意気にも程があるように強気な言葉具合を並べた。
ルッパスも負けじにと、
「そんな生意気いうなら、この森から出てってもらうぞ。」
と、言い放つが、
タライラはまだ態度の悪さを際だてている。
「あんたらもみの木さんたちが一体なにができるっていうんだよ。僕らは足があり移動できるんだからね。」
そういうと、もみの木に向かって力のいっぱいの蹴りを見せた。
それについに腹が緒が切れたルッパス。
「よくそれができたもんだ。」
そう言うとそこから言葉は発しなかった。
そしてなんの変化のない1週間が過ぎた日の夜。
ルッパスは、小さな声で木々たちを起こした。
「おいみんな。変わらない1週間だったこともあり、決意したよ。今日また140年ぶりの天変地異を起こすことにする。」
もみの木一同は震えあがるように木筋を伸ばした。
「・・・あの力を使うまでになったのね」
周囲が真夜中に備え出した。
すると真夜中にもみの木村の土が揺れはじめた。
住人たちは、なんだなんだと深い眠りから叩き起こされたかのように出てきた。
タライラも不機嫌そうに家の外にでて、あたりを確認した。
地面は恐ろしくぐらついている。
するともみの木たちが、
「せーの!」と掛け声をかける。
その瞬間、もみの木たちは根元をこんちくしょうと踏ん張り出す。
ズドドドボボーッッッウッッッ
物凄い音と共にもみの木たちが地底の方に下がっていく。
綺麗に住人たちがいる地面だけを残し、もみの木たちだけが地底に下がったかとおもえば、ちょうど葉の部分、つまりはもみの木にとっての頭部分がちょうど住人たちと同じ目線に立った。
するとリーダーのルッパスが、
タライラに向かってこう告げる。
「1週間もあげたのにお前らの暮らしは全く変わらなかった。よって140年振りに天変地異を起こす。」
その言葉と共に、
もみの木たちは一斉に、頭の葉の部分をうまい具合に箒のように住人たちをゴミ共々にはき散らした。
住人たちは、
「きゃぁぁぁー」
といいながら知らない崖まで追いやられ崖下へと1人残らず転げていった。
もみの木たちは、沈黙の村を見つめた。
「ルッパス、これでまた私たちはひとつもみの木村の時代を変えてしまったわね。また地域が繁栄するまでは、ヤシの木村にもクスの木村にもバレてはならないわね。」
「あぁ、これでよかったんだ。さもないと僕たちが倒れてしまう。ただ天変地異を意志を持ってするのは固く禁じられている。みな、くれぐれもなかったことに、な。」
もみの木たちは、口なんかなかったかのようにキツく頷いた。
そしてまたもみの木たちはまた100年、200年と生きていく。
もみの木村にはただの土と円陣を組むように並んだもみの木だけが残った...。
「いつか共存できる村人が現れるまで、俺たちは待とうじゃないか」
ルッパスは皆に迫力足らずに、放った。
それから500年、未だもみの木村には人っ子1人繁栄していない。
(編集部より)本当はこんな物語です!
江戸時代初期、放蕩を理由に幕府から隠居を命じられた、仙台藩の若き藩主・伊達綱宗。綱宗が信頼していた重臣・原田甲斐は、背後に渦巻く陰謀と、藩が迎えた存亡の危機を前に、逆らえない運命の歯車に巻き込まれていく――。江戸の三大お家騒動と呼ばれる「伊達騒動」を題材に、山本周五郎が新たな解釈で描いたこの作品は、NHK大河ドラマ(1970年)を始め、再三にわたって映像化されています。
原作で樅の木は、周囲に誤解されても黙して語らず、己の所信に従い淡々と孤高を貫く原田甲斐の生き様の象徴として描かれます。対照的に、滝沢さんが描く樅の木たちはとてもおしゃべりですが、原作で原田甲斐は「木がいちばんよくものをいう」とも述べています。杜の都ならぬ森の村が迎えた未曽有の危機、やがて訪れる破局と、原作に通じるもの悲しさも漂わせています。