冒頭、コロナ禍にふれる。哲学者が生きた19世紀前半と現代を、感染症という共通体験で結ぶ。
人々の安全を守る政策は重要だ。一方、生活の隅々にソフトな管理が及ぶ危うさもある。ヘーゲルが主著で検討した概念「ポリツァイ」を、自発的な職業団体を指す「コルポラツィオン」と共に主題にし、個の自由と共同性の一致を追求した軌跡を読み解く。しばしば批判されてきた全体主義者との評に反論する。
有名な「理性的なものは現実的であり、現実的なものは理性的である」。著者によれば、存在するものには真理・非真理が同時にあるということ。国家もそう。独裁国家の例もあるが、真理を見なければいけない、と。
京都大学のオンライン講義を元にした。市民と学ぶNPO法人の代表ならではの開かれた語り口だ。=NHKブックス・1650円(藤生京子)=朝日新聞2024年11月16日掲載