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「そして、バトンは渡された」どんな本? 永野芽郁さん・田中圭さん出演で映画化も

瀬尾まいこ『そして、バトンは渡された』あらすじ

 『そして、バトンは渡された』は2018年2月刊行。幼くして母を亡くし、血縁のない大人たちにリレーされるように育てられた女子高校生の成長する姿を描いた家族小説。義父らとの日常を通して、家族の形を問いかける作品です。

 2部構成で綴(つづ)られる物語の主人公は、幼くして実母を亡くした優子。水戸優子だった彼女は、その後、田中優子になり、泉ケ原優子を経て、森宮優子となった。都合3回名字が変わっているわけで、高校の担任教師をはじめとする周囲の大人たちは、優子を複雑な家庭の子どもだと見なしていた。
 困ったことや、辛(つら)いことはない? 我慢しなくていいんだよ。不幸であることを前提で言葉をかけられるが、困ったことに、優子はなにも困っていなかった。実継合わせて父親が3人、母親が2人いるが「全然不幸ではない」のである。それはいったい何故(なぜ)なのか――。愛される心強さ、愛せる幸福 瀬尾まいこ「そして、バトンは渡された」|好書好日

『そして、バトンは渡された』プロはこう読んだ

 書評家の藤田香織さんは「好書好日」に掲載された朝日新聞読書面「売れてる本」で「『ベストセラー』というだけで敬遠してしまう癖のある人にこそ読んで欲しい」と太鼓判を押しています。

 大人たちの事情で家族の形態が変わったのは7回。第1部で17歳の優子は、血の繫(つな)がりはない37歳の男性「森宮さん」とふたりで暮らしている。その状況だけ見れば余計な心配もしたくなるだろう。けれど、読み進むうちに、優子の「親」たちが、それぞれの思いとそれぞれのやり方で、彼女を慈しんできたことがわかってくる。
 親が5人いることも、血の繋がらない娘を養育することも、社会的な大事件ではないが、些末(さまつ)な問題ではない。歳月を経てそれぞれの想(おも)いが溢(あふ)れ出す第2部は、おためごかしの感動臭には敏感な本読みのプロたちが「素晴らしい」と口をそろえた。愛される心強さ、愛せる幸福 瀬尾まいこ「そして、バトンは渡された」|好書好日

2019年本屋大賞を受賞した瀬尾まいこさん(左)と昨年の受賞者・辻村深月さん

瀬尾まいこさん、本屋大賞受賞コメント

 『そして、バトンは渡された』は2019年本屋大賞(第16回)の大賞を受賞しました。2019年4月9日にあった発表会で、瀬尾さんは「愛情を注いでもらえる作品になったことを本当に嬉しく思います」と喜びを語りました。

 この「そして、バトンは渡された」は自分で書きながら、書いている途中に「あっ、私ってこんな気持ちが書きたかったんだ。ここに書いた気持ちは普段思っていることなんだ」と気づけた作品です。
 ひとりの女の子にいろんな大人たちが血が繋がっていたり、長い時間だったり短い時間だったり、いろんな立場でありながら親として関わっていく様子を描いた作品なんですけど、書きながら「愛情を注がれることはすごく幸せなことなんですけど、愛情を注ぐ当てがあることはもっとはるかに幸せなんだ」ということを改めて感じました。
 私自身、結婚前は中学校で働いていたんですけど、厄介で繊細でまどろっこしい時期でもあるんですが、中学生ってもれなくみんなキラキラしていて、本当に一緒にいるだけで自分では動かせない、大人との関わりでは動かせない心の奥の方を中学生たちに動かしてもらっているので、本当に毎日が色濃くなったのを思い出します。2019年本屋大賞に瀬尾まいこさん「そして、バトンは渡された」 【受賞コメント動画有】|好書好日

永野芽郁さんが優子役、田中圭さんが森宮役で映画化

 『そして、バトンは渡された』は映画化され、2021年10月に公開されました。主人公・優子役を演じた永野芽郁さん、血のつながらない父親・森宮役を演じた田中圭さんは「好書好日」のインタビューで「家族とはどういう存在ですか」と問われ、次のように答えています。

田中:場合によって、常に家族といるのが正解だとは限らないときもあると思うんです。家族って、一番近くにいる人たちじゃないですか。でも、それぞれ人によって、家族の形も違うでしょうし、年齢によっても捉え方が違うはず。とはいえ、離れていても、近くにいるような存在というのは、間違いないかなと。

永野:味方ですね。私がすごく悪い人間になったらわからないですが、失敗しても、頑張っている姿を見せても、一緒に喜んでくれる。もちろん友人や先輩といったいろいろな方も声をかけてくださいますが、家族が一番ストレートな意見を言ってくれるから。一番、言葉を信じなきゃいけない人たちだなと思いますね。映画「そして、バトンは渡された」永野芽郁さん、田中圭さんインタビュー 血のつながらない親子、未来の楽しみが2倍に|好書好日