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映画「火喰鳥を、喰う」山下美月さんインタビュー 幸せな夫婦に起こる不可解な現象「静かなる怖さ」

(C) 2025「火喰鳥を、喰う」製作委員会

SFと怪奇がミックスされたミステリー

――本作は、先祖の日記を受け取ってから不可解な出来事に巻き込まれていく物語です。原作を読んでの第一印象はいかがでしたか? 

 原作を読み進めるにつれて、たとえば火喰鳥の描写をどのようにリアルに表現するのか、このストーリーをどうやって実写化するのか気になりました。言葉では形容できない薄気味悪さや、少し背筋がゾッとするような静かなる怖さを感じました。

――横溝正史ミステリ&ホラー大賞受賞作ということで、日本の田舎を舞台に謎を解き明かしていくミステリー要素と、じわじわと不可解な出来事が忍び寄ってくる得体の知れない恐怖があります。

 そうですね。映画ではホラー要素より、ミステリー要素が強い印象になっているのですが、少しSF的なものと怪奇現象がミックスされたミステリーに仕上がっています。そういうお話には今まで出演していませんでした。

自分なりの夕里子を演じられた

――山下さんが演じる夕里子は、夫の雄司とともに超常現象専門家の北斗総一郎(宮舘涼太)の力を借りて、事態の真相を探っていきますが、演じるにあたって意識したところは?

 夕里子という役は、基本的に受け身の芝居が多かったので、水上さんと宮舘さんに引っ張っていただきながら演じていて。3人の三角関係の中で生まれる執着が引き金になっていろいろな事件が起こるので、事前にこうしようと決めずに、芝居の中で生まれた迷いや疑心暗鬼といった感情を大事にして、現場で感じたものをちゃんと受け取るということを意識しました。

 ストーリーにおいて、水上さんと宮舘さんはアクションを起こす役どころとなっているので、おふたりに比べて私は落ち着いている役と言いますか。夕里子は自ら動かないですし、受け身でいながらも、常に何かを感じて、考えてはいるんですよね。「動と静」があるとするなら、おふたりは「動」で、私は「静」を表現しました。

――おふたりと共演してのご感想は。

 水上さんと宮舘さんは全然違うタイプの役者さんで、私は夕里子として中間にいられる人間になりたくて、おふたりのいいところを少しずつ取り入れたような芝居ができたらいいなと思っていました。

――夕里子について、原作の印象と、映画で役を演じ終えた今の印象の違いはありますか?

 原作では、夕里子は能面のような女性だと書かれていて。とくに感情を出すこともなく、本当に静かで何を考えているのかわからない女性となっています。ですが、撮影前にたくさん打ち合わせしていくなかで、「映像では温かみや冷たさという感情の移りは見えたほうがいい」という話になって。映画では明るく元気に演じる必要はないけれど、普通に結婚して妻として田舎にやってきて馴染もうとしている姿を描いていく。その感情の機微は少し見えるようにしたいなと。そして家庭的で仕事もしていて強い女性でもある夕里子は、本心では、あえて良い妻を演じているところもあると考えました。自分なりの夕里子を演じられたという印象です。

 原作は人気の作品ですし、とても面白い内容で、映画でももちろんその世界観は大事に展開されていきます。もしかすると日記の話が出てくるあたりからの謎が始まる部分は、一見すると難しそうな話と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、頭を働かせるよりは、感情でとらえていただきたいなと。実は生きていると誰にでも起こり得る感情を描いているので、自分だったらどうするかなと思いながら、スリリングさも楽しんでご覧になっていただけたら嬉しいです。

本屋に行くと、世の中の流れがわかる

――今回、ミステリー&ホラー作品の実写化でしたが、普段はどのような本を読みますか?

 『火喰鳥を、喰う』はとても面白く読ませていただきましたが、普段はホラー作品に関してはそこまで得意ではないので、あまり手に取る機会はないかもしれません。ミステリー作品となると、本より映画などの映像で観ることが多いです。自分で読む時は、エッセイのような人の気持ちを包み隠さずに表現している内容の本が多いですね。

――どのような作者のエッセイを読むのですか?

 いろいろな芸人さんが発売されているエッセイですとか、女性タレントさんのエッセイを本屋さんで手に取ります。

――本屋にも行くんですね。

 けっこう行きますね。その時々によって、どういう作品が流行っているのかな、と気になるので。私を掲載していただいている雑誌などを見に行くこともあります。本屋さんに行くと、世の中の流れがよくわかりますね。

――7月に26歳の誕生日を迎えて、映画やドラマにご多忙ですが、今後の抱負をお聞かせください。

 今こうしてお仕事をいただけているのが本当にありがたいですし、より勉強していかなくてはと思っています。お芝居を通して、いろいろな経験ができたり、スタッフさんやキャストさんを含めてさまざまな人たちに出会えたりすることが、私には重要なことだと実感しています。これからも自分がやれることを一生懸命やっていきたいです。