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歌人・俵万智さん×動物言語学者・鈴木俊貴さん 生きるための言葉、人間も鳥も 

「言葉」をテーマに語り合う俵万智さん(左)と鈴木俊貴さん=24日、東京都新宿区

 「言葉」をテーマにした本がベストセラーになっている著者の対談は、驚きと笑いに満ちていた。

 「生きる言葉」(新潮新書)を刊行した歌人の俵万智さんと、「僕には鳥の言葉がわかる」(小学館)を出した動物言語学者の鈴木俊貴さんが24日、東京都新宿区の紀伊国屋ホールで「つなぐ言葉、羽ばたく言葉」と題して語り合った。秋の読書推進月間「BOOK MEETS NEXT 2025」のオープニング企画だ。

 俵さんは4月、鈴木さんの本を読んで「面白すぎた…鳥たちも、生きるために言葉を使っている!」とXに投稿し、「勝手に応援を始めた」という。対面がかない「SNSに光と影があるとしたらこれは光の部分だな」と喜んだ。

 鈴木さんは「教科書に出ていた俵さんが推してくれて、めちゃめちゃうれしかった」。20年にわたってシジュウカラを観察し、言葉を持つことを解明した経緯を紹介し「まさか人間の言葉のプロフェッショナルと対談する日が来るなんて」と応じ、笑いを誘った。

 インターネットやAIとの付き合い方も話題になった。

 鈴木さんは中学生のころ、雑誌「月刊むし」を愛読し、そこで見た「旬の虫」を林で探していた。当時の観察経験がいまの研究にもつながったと考える。「子どもたちは情報を効率的に得ることが幸せだと思い込み、自然との関わりから得られるワクワクや気づきを持つ機会が減っているのでは」

 俵さんは小学校の教員に、AIに書かせた読書感想文がばれないよう工夫を凝らす子がいると聞いた。だが「AIにやらせるのはすごくもったいない」と強調する。

 「本を読みっぱなしにしないで味わい直して、自分の言葉でつたなくてもいいから書くと、定着したり発見したりすることがある」

 鈴木さんは、巣立ったヒナを観察し、親鳥が寄り添って鳴き声や身ぶりで危険を教えているという最新研究の一端も明かした。「人間のメールや電話も便利だが、もっと動物に言葉との付き合い方を学ぶ面があるかもしれない」

 これに対し俵さんは、「たぶん人間も命を守り、仲間とつながるために言葉を生み出したんじゃないか。シジュウカラにはすごく学ぶことがある」とうなずいた。

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 BOOK MEETS NEXTは、多くの人が書店に足を運び、本を楽しむきっかけを作ろうというキャンペーン。今年は11月23日までの期間中に全国9地域で約100件の催しが予定される。全国約3千の書店では、スマートフォンでQRコードを読み取って集めると、10万円分の図書カードや宿泊券が当たる「BOOKスタンプラリー」も行われている。詳細はウェブ(https://book-meets-next.com/)で。(伊藤宏樹)=朝日新聞2025年10月29日掲載