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〈オススメ〉牟田都子・編「贈り物の本」 37人の心を温めてくれる逸話

 37人が「贈り物」にまつわる話をつづった。作家、俳優、ミュージシャン、書店主、住職と、書き手の顔ぶれは多彩だ。

 同じ店のバウムクーヘンを誰彼構わず手土産にした元編集者、恩師の謝恩会で非常用持ち出し袋を贈った文筆家……。自信や後悔といった思い出が数ページずつ連なる。

 話は「物」にとどまらない。暴力団取材を続けるライターにとって、暴力団にもらうのは「情報のみ」という。締め切りに追われ、夜明け前に起きて執筆する詩人は、カーテンのすき間から差し込む朝日を見て、「暗闇と光」の贈り主は誰だろうと思索を巡らせる。

 校正者の編者が仕事を始めたころ、先輩の「辞書と仲良く」という助言は紛れもない贈り物だったと振り返る。寒い季節に、心を温めてくれる逸話が詰まっている。(伊藤宏樹)=朝日新聞2025年12月6日掲載