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きのしたけいさんの絵本「おなべさん」 この鍋でつくるのはどんな料理? めくって楽しむ、コクヨのしかけ絵本

『おなべさん』(絵:moko/コクヨ)より 

文房具メーカーの特色を活かした「しかけえほん」

——「おなべさん/おなべさん/なにつくる?」。しかけ扉をめくると、お鍋の中からいろんな具材が現れて……食卓を彩るさまざまな料理が登場する『おなべさん』(絵:moko/コクヨ)は、コクヨが刊行する「しかけえほん」シリーズの1冊だ。作者のきのしたけいさんはコクヨが新規事業として立ち上げた絵本の出版事業に携わり、絵本作家として人気シリーズをつくり出してきた。

『おなべさん』(絵:moko/コクヨ)より

 コクヨは絵本作家のtupera tuperaさんとタッグを組んでつくったシールブック『かおノート』をはじめ、着せ替えや塗り絵ができる『おしゃれノート』、水彩のようなタッチで描ける「透明くれよん」など、事業の立ち上げ当初から小さな子どもたちに向けたツールを企画・制作してきました。

 コクヨの出版事業の根底にあるのは、「子どもの想像力や探究心を育めるツールをつくりたい」という思い。赤ちゃんや未就学の子どもたちが実際に手を動かして楽しめる絵本をつくろうと、工作やペーパークラフトなど、これまで積み上げてきたノウハウを活かして「しかけえほん」のシリーズを手がけています。

 2018年から『くだものどうぞ』『おやさいどうぞ』『いろんなおやさいどこになる?』(いずれも絵:阿部真由美/コクヨ)などの「しかけえほん」シリーズを刊行しています。食べもの、動物、生活習慣などさまざまな題材があるなか、「次は何にしようか」と考えたときに思い浮かんだのが、「料理」というテーマでした。

家庭料理で使うさまざまな鍋が登場

——鋳物ホーロー鍋で煮込むカレー、土鍋でつくる寄せ鍋、雪平鍋で煮るインスタントラーメン……など、しかけをめくると調理の過程が見えてくる。つくる料理によって、いろいろな種類の鍋が登場するのも面白い。

『おなべさん』(絵:moko/コクヨ)より

 同じく「料理」をテーマにした前作の『フライパン』(絵:moko/コクヨ)が好評だったので、本作では「鍋」を使った料理に挑戦してみました。カレーやおでん、唐揚げなど、メニューも身近なものをピックアップ。鋳物ホーロー鍋で煮込むのはカレーにするか、はたまたシチューにするか、最後に取り上げるごちそうはすき焼きにするか、しゃぶしゃぶにするか……など、取り上げるメニューについては何度も編集部と話し合いました。

 夫婦共働きが増えた昨今、毎日の食事づくりに多くの時間を割くことは難しくなっていると感じます。「しかけえほん」シリーズを通して、私たちが大切にしたいことは、親子のコミュニケーション。食事はどんな過程でつくられているのか、絵本を読む子どもたちが毎日の食卓に興味を持ち、「同じお鍋がうちにもあるね!」などと話しながら親子で料理をするきっかけになれば、という思いを込めて制作しました。

 前作『フライパン』もそうなのですが、ごはんを食べた後は鍋を洗うところまで描くのもこだわりのひとつです。食器を洗うことも毎日のごはん作りには欠かせないことなんだよ、というところまで伝えたかったんです。

——リアルなタッチでmokoさんが描き出す料理の数々も、見どころのひとつ。完成した料理の見せ方にはこだわったという。

『おなべさん』(絵:moko/コクヨ)より

 読者に「おいしそう!」と感じてほしいので、出来上がった料理を見せるベストな角度や鍋の中身については、mokoさんや編集担当者と相談しながら、細かく調整を重ねました。

 mokoさんとのやり取りで印象に残っているのは、「おでん」の絵ですね。最初にラフを描いていただいたとき、戻ってきたのが串に刺さった具材や黒いはんぺんなどが入っている「静岡おでん」だったんです。「そうか、一口に『おでん』といっても地元色が濃く現れるんだな」と納得。今回はオーソドックスな具材に変更してもらいましたが、郷土食も面白いなと感じたひとこまでした。

“小さな読者”にも誠実に向き合って

——絵本では企画・構成・文章を担当することが多いが、いろいろな動物が登場する赤ちゃん向けの近著『いないいないばあ!』(コクヨ)では、文と絵の両方を手がけている。動物の生態や習性については、野毛山動物園の園長を務めるパートナーの田村理恵さんが監修した。

『いないいないばあ!』(作・絵:きのしたけい/コクヨ)より

 動物の絵は少しデフォルメして表現していますが、監修を担当したパートナーからは「レッサーパンダの肉球は毛で覆われているので見えない」など細かい指摘を受け、何度も描き直しました。「しかけえほん」シリーズすべてに共通することですが、子どもたちが初めて出合う絵本かもしれないので、誤ったイメージは植え付けたくないんです。絵本のつくり手として、小さな読者にも常に誠実であることを心がけています。

 読み聞かせを盛り上げるコツは、「なにかな〜?」などと期待を高めてから、しかけをゆっくりとめくること。『おなべさん』や『フライパン』を読んだ後、絵本に登場したメニューを実際に子どもと一緒につくってみるのもいいかもしれません。「親子で手を動かして楽しむコミュニケーションツール」として、ぜひ「しかけえほん」シリーズを活用していただければと思います。