「柴崎さんがヒョウ柄を着るなんて意外! ヒョウ柄を着るような人には見えない。着てるところ、見たことないですし」と、仕事でときどき会う人に言われた。
そのときはヒョウ柄を着ていなかった。ヒョウ柄を着るような人、がどんな人なのかわからないが、私は身につけるたいていのアイテムで、ヒョウ柄を複数持っている。コート、ダウンジャケット、セーター、シャツ、Tシャツ、パンツ、スカート、帽子、靴、靴下、鞄(かばん)……。著者近影や取材では着ないのは、柄物は写真だと画面がすっきりしないからだ。
その後、その人に会う機会にはヒョウ柄を着て行った。ヒョウ柄で複数回会ったが、「ヒョウ柄を着ていますね」と言われたことはない。気がついていないのか、私とヒョウ柄について言ったのを忘れているのか、ともかく、私の着ているヒョウ柄を気に留めた気配はない。
そんなもんやんな、と思う。「そんなふうには見えない」、もしくは「○○さんってこういうタイプ」などの言葉には、深い意味はない。言われたほうは気になったとしても、言ったほうは言ったことも覚えていない。私も逆の立場で誰かに似たようなことを言ったかもしれない。
それにしても「ヒョウ柄を着るような人」ってどんな人なんだろうか。大阪の中高年女性はヒョウ柄を着るというステレオタイプはあり、それなら私は大阪出身の中高年女性なのでヒョウ柄を着るのは意外ではない。ずっと前にもエッセイにヒョウ柄の話を書いたら「ヒョウ柄を着るなんてイメージダウン」という感想があって驚いた。服の模様くらいのことで、人のイメージが上がったり下がったりするのかー、と思ったのを覚えている。「意外」と言われたのも、理由はいまだにわからない。
この間、近所(東京)でヒョウの柄ではなくてヒョウの顔が描かれたTシャツに猫がたくさん描かれた靴を合わせたすごくおしゃれな女性がいた。どこで買ったのか、勇気を出して聞けばよかった。=朝日新聞2026年2月4日掲載