ISBN: 9784867221266
発売⽇: 2026/01/26
サイズ: 14.8×21cm/476p
「パレスチナ/イスラエルを読み解く」 [著]錦田愛子
2023年10月にハマスの対イスラエル越境攻撃を契機として始まったイスラエルのガザ攻撃は、現在までに7万人を超える死者を出し、現在も続いている。昨年10月の停戦合意後も事態に改善はほぼ見られないが、メディア報道は減り、読者は漠然と、平和になったものと誤解する。ましてやイラン戦争が起きると、関心はそちらに移る。
関心を持とうにも問題が複雑すぎて、という読者の悩みに答えようとは、中東研究者なら誰しも考えることだ。ガザ攻撃以来、パレスチナ関連の本が多く出版された。
だが、歴史から読み解き、かつ直近の過去30年間の流れを丹念に追った本は、なかなかなかった。著者は、今この問題で最も頻繁にメディアで発信を続ける新進気鋭の中東政治研究者のひとりだ。
淡々と事実経緯を解きほぐすなかにも、個人的な体験、記憶がにじみ出る。オスロ合意後のイスラエル・パレスチナ共存に向けた淡い期待、そしてそれが崩れ落ちるさまをリアルタイムで経験してきた世代ならではの視点が底流にある。
だからこそ、オスロ合意の欠陥に手厳しい。国際社会が金科玉条とする二民族二国家案(パレスチナ民族に国家を認める)にも、それがすでにおためごかしでしかないことを指摘する。
本書が取り上げる事象は、昨年の停戦合意のあとで終わっている。書き終えた直後に天変地異的大動乱が起きるのが、中東関連本の「あるある」なのだが、刊行後に起きたイラン戦争についても、その伏線と重要性がしっかり説明されている。
直接対決すれば大変なことになると理解していたからこそ、これまで戦火を交えるのを控えてきたイランとイスラエルが直接対峙(たいじ)したことは、中東秩序が変動期に突入したという意味だ。
「より強大な力をもつ側が戦争を制し、有利な方向に現状を変更して新しい秩序を築くというパターン」の定番化に、歯止めはかけられるのか。
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にしきだ・あいこ 1977年生まれ。慶応大教授(中東現代政治、移民・難民研究)。著書に『ディアスポラのパレスチナ人』。