いよいよ夏本番。楽しい思い出がたくさんできることを願いつつ、この夏のおすすめの本を紹介します。(☆=新刊、★=既刊、価格は税込み)
【翻訳家・さくまゆみこさんのおすすめ】
☆「ベッシーちゃん」(アリス館)
なおちゃんのおばあちゃんの名前はフジ。でも英語で歌をうたうし、ベッシーという名前ももってるんだって。日本からの移民2世としてカナダで生まれ育ったベッシーちゃんが、バンクーバーでの楽しかった幼少期のこと、8歳で日本にひとりで「留学」して苦労したこと、そのうち戦争になってカナダに帰れなくなり、故郷や英語についてはひた隠しにしていたことなどを語っていく。作者の祖母がモデルで、祖母を思う孫娘のあたたかい気持ちが伝わってくる=小学校低学年から(石川えりこ作、2090円)
★「クマよ」(福音館書店)
作者は、自分とクマには「同じ時間が 流れている」けれど、両者は「はるかな 星のように 遠く はなれている」と言う。「おまえ」とクマに呼びかける文章からも、自然の中の生態を伝える写真からも、作者の愛と畏敬(いけい)の念が伝わってくる。クマ被害のニュースが頻繁に流れる今だからこそ、遺稿を元にしたこの写真絵本を見ながら、クマについてもう一度考えてみてはいかが=小学校中学年から(星野道夫文・写真、1430円)
【ちいさいおうち書店店長・越高一夫さんのおすすめ】
☆「虫のウラがわ図鑑」(あすなろ書房)
虫のオモテがわではなく、ウラがわに注目したありそうでなかった図鑑。発想がユニークで面白く、ウラがわを写真で撮る技術には驚いた。本書はウラがわの写真をじっくりながめながら、文章をヒントに虫の名前をあてていくというクイズ形式をとっていて、虫の好きな人にはもちろん、苦手な人でも楽しめるように工夫されている。またムカデの足は本当に100本あるのかというような疑問に対しても、わかりやすく解説しているので新しい発見や学びがある=小学校低学年から(安田守写真、高岡昌江文、1980円)
★「星空キャンプ」(徳間書店)
ミナはお父さんとお母さんと3人で湖のほとりでキャンプをしている。カヌーにのって水の中を泳いでいるマスを見つけたり、キイチゴをつんでジャムをつくったりしているうちに楽しい時間が過ぎていく。ミナは日常とはちがうキャンプでの体験を通して、自然の中でくらすことの心地よさを感じはじめていた。アウトドア派におすすめの絵本、表紙を新たに待望の復刊=3歳から(村上康成作・絵、2310円)
【丸善丸の内本店児童書担当・兼森理恵さんのおすすめ】
☆「おまつりって、こわい?」(世界文化社)
うさぎちゃんは勇気が持てず、憧れのお祭りに行ったことがありません。そこにかっぱちゃんがあらわれ強引にお祭りに連行されます。そこはうさぎちゃんにとって迫力満点の異世界。受け止めきれない大きな音や人の多さ。涙をこぼすほど圧倒されていたうさぎちゃんですが、かっぱちゃんに貰(もら)ったお皿を手に、勇気を出して進みます。お祭りで出会う強烈な人たちとコミカルに展開するお話の中で、健気(けなげ)なうさぎちゃんの勇気に注目!=5歳から(樋勝朋巳作、1760円)
★「やかましむらのこどもの日」(偕成社)
やかましむらの子どもは6人と半分。6人はまだ遊びに入れない2歳のシャスティーンを満足させ、その後自分たちも思いきり遊べるよう「やかましむらのこどもの日」を作ります。ときにお母さんが飛んでくるようなハラハラする遊びもありますが、子どもたちは一生懸命! 自由な発想で夢中に過ごす姿は眩(まぶ)しく、全身を使って遊びたくなる一冊です=小学校低学年から(リンドグレーン作、ヴィークランド絵、山内清子訳、1100円)
【絵本評論家・広松由希子さんのおすすめ】
☆「ぼくらをからないで」(岩波書店)
「ぼくらは かりが だいきらい。だいすきなのは たいそうと きのみ」。きっぱり言うのは2匹のリス。でも森で狩りをすることに人も犬も狼(おおかみ)も、大多数が賛成なのです。唯一反対派の仲間、ウサギの耳に鉄砲玉が命中し、ハンターがうろつき、眠れない夜。ぼくらは日々をただ静かに過ごしたいのに。ユーモラスで飄々(ひょうひょう)とした絵と文が、切々と今に語りかけます。多数派に脅かされても、森の王様はぼくらだと、自分を見失わないリスたちの凜々(りり)しさよ=5歳から(エーヴァ・リンドストロム作、よこのなな訳、1430円)
★「くも」(文化出版局)
「ある夏の夕方」と書かれた最初のページから、「暑い一日」が始まる最終ページまで無言。オニグモの一夜のドラマに見入ります。日暮れから少しずつ張り巡らせた巣で、深夜に獲物を捕らえ、また朝までに巣をたたむ夜行性のクモ。半透明のページをめくることで、時間と動きの残像が重なっていくような精巧な造り。自然の力で動く立体作品で知られる彫刻家の絵本に、生命の神秘を感じて=5歳から(新宮晋〈すすむ〉作、1980円)
=朝日新聞2026年7月25日掲載