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斎藤幸平さん「人新世の『黙示録』」 世界の終末、「暗黒社会主義」という道

斎藤幸平さん

 気候崩壊とテクノ資本主義がもたらす世界の終末。今こそ計画経済による「暗黒社会主義」が必要だ――。思想家の斎藤幸平さん(39)=東京大准教授=が、話題となった「人新世(ひとしんせい)の『資本論』」の続編「人新世の『黙示録』」(いずれも集英社)を著した。執筆への思いと現状への危機感を聞いた。

 2020年刊行の「人新世の『資本論』」は、人類の経済活動が地球を破壊し、気候変動が急激に進む「人新世」では、マルクスの再評価と、社会的に共有されるべき富の「コモン」を再建するための「脱成長コミュニズム」が必要だと訴えた。

 あれから6年。斎藤さんは「今、振り返れば楽観的すぎた」と今作につづった。

 世界中で豪雨、山火事など大規模な自然災害が発生。「気候変動」どころか「気候崩壊」が加速する。少数の巨大プラットフォーム企業が市場を支配する「テクノ資本主義」は、富の極端な偏在を引き起こしている。

 ドイツの哲学者マルクス・ガブリエル氏が説く経済と道徳を融合させた「倫理資本主義」など、資本主義の修正で危機を乗り切ろうとする主張に「現実的な説得力を失っている」と疑念の目を向ける。「だんだん世界は良くなるという理想を語るリベラル的な主張が成り立たない」

 米国でトランプ政権を支持する右派テックエリートたちは、人工島建設や火星移住の計画を進める。選ばれた者のみが生き延びればよいという選民主義だ。

 こうした「終末ファシズム」に対し、左派としてどのようなビジョンがありうるのか――。斎藤さんは今作で「暗黒社会主義」という第三の道を提唱する。「未来が悪くなることを受け入れたうえで、包摂的な『黙示録』を考える必要がある」

 その肝が、資本主義の暴走を食い止めるために市場に国家が介入する「計画経済」だ。斎藤さんは計画経済を「隷属の道」と批判した経済学者ハイエクの論に向き合い、晩年のマルクスの思索も踏まえ、市民参加型・民主的な下からの計画経済の形を思索していく。

 「実はテックエリートたちとも、ある地点までは考えは重なっています」。彼らは技術やアルゴリズムを用いて国家と結びつくことで、ある種の計画的な資本主義経済の姿を描いている、とみる。しかし「誰が何のために、誰のためにやるかという点で、大きな分岐がある」。斎藤さんはテックエリートとは違う、民主的なテクノロジーの用い方や意思決定の必要性を説く。

 「日本では左派が高齢化して、このままだと消えてなくなる」。ただ、昨年の米ニューヨーク市長選で勝利したマムダニ氏など新しい左派、社会主義の流れがある。「だからこそ、日本でも左派の思想を大きくアップデートして打ち出したい」(平賀拓史)=朝日新聞2026年6月3日掲載