倫理学者 古田徹也さん
①麦とTwitter(久木田水生著、共立出版・4950円)
②デンデラ野は、なぜそう呼ばれたか(筒井功著、河出書房新社・2970円)
③はてしない物語(ミヒャエル・エンデ著、上田真而子・佐藤真理子訳、岩波書店・3146円)
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今年の夏も暑いだろう。冷房の利いた屋内にいれば、スマホを見る時間も増えるだろう。①は、情報技術が社会やコミュニケーションのあり方にどのような影響を与えるかを、非常に多彩な角度から深く検討している。皆がいま、スマホをいったん脇に置いて読むべき本だ。
②は、日本各地の地名の由来を丹念に探索する力作だ。今夏の旅先の地名にはこんな意味があり、よく知っているあの地名と実はつながるかもしれない。本書を読めば、旅行に新たな視点も加わるはずだ。
③は言わずと知れた名作だが、最近、約30年ぶりに読み返して、以前と相当異なる印象を受けた。本には、時を遠く隔てて再読する愉(たの)しみというものがある。本書はそれを味わうのにうってつけだ。
東京大学名誉教授 御厨貴さん
①夜明といふ駅(高橋睦郎著、ふらんす堂・2750円)
②戦争の世紀を読む ナチズムと帝国日本を超えて(佐藤卓己著、岩波現代文庫・1760円)
③特捜取調室 『国家の罠』20年目の再対決(佐藤優・西村尚芳著、新潮社・2200円)
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①時を手繰る歌人あり。一日一首、365日を歌い抜く。「夕づくに心あくがれ道に出(い)でてさまよふ習ひ今宵も我がする」の自註(じちゅう)鮮やか。「『苦海浄土』はされきびと道子のケに徹したハレの書」「地下びと道子と美智子上皇后の通路はそこにあろう」。三島忌にちなみ「三島とのわが六十(むそ)とせや生前の六(む)とせより濃き死後五十四(いそよ)とせ」。人と時を歌う宇宙は広がり続ける。
②時を経て本に臨む書評子は「書評の公共性」を信じる。テーマは、おや、今も同じだねぇ。③時の流れが『国家の罠(わな)』のその後を用意。国策捜査を形づくった佐藤優と検察官西村尚芳。対立構造が20年を経て確かに反転する。敵対者同士も相手の人格を尊重する限り、言論の正邪を超えるべく、時の流れが作用する。
俳優・エッセイスト 美村里江さん
①25時のバカンス 市川春子作品集Ⅱ(市川春子著、講談社・880円)
②水族館飼育員のただならぬ裏側案内(なんかの菌著、集英社インターナショナル・1650円)
③琉球蟹探訪(さとかつ著、小学館クリエイティブ・935円)
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気温40度に迫る近年の夏は、「大好きな本の読み返し」と「漫画」を特に楽しむ季節としています。今回は夏休みを感じさせる漫画3セットです。
①の表題作は、奇妙な深海生物に寄生された天才女性科学者とその弟のお話。ほろ苦くも笑えつつ、爽やかな世界観が大好きです。
「元水族館の中の人」による②は、海水・淡水生物飼育中の私でも未知の驚きが沢山(たくさん)。4コマと解説というバランスも楽しく、読後は水族館が十倍楽しめちゃいますよ。
③は書籍のプロフィールに「蟹(かに)が好きです。」としか書いていない、さとかつさんによる蟹漫画。非日常的な冒険の魅力、なにより蟹が可愛いです。ベニシオマネキに会いに沖縄に行きたくなります。
現代美術家 横尾忠則さん
①シュルレアリスム宣言・溶ける魚(アンドレ・ブルトン著、巖谷國士訳、岩波文庫・935円)
②禅学入門(鈴木大拙著、講談社学術文庫・1320円)
③青銅の魔人(江戸川乱歩著、ポプラ社・1078円)
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近年は書評以外の本はほとんど読まないので、昔読んだ本を思い出すことにしました。①の「シュルレアリスム宣言」は美術に目を開かせた本で、私の創造の源泉になっています。
禅寺に参禅し始めて間もなく出会ったのが鈴木大拙の様々な著書ですが、中でも②は私の生き方と創作の指南書として、旅の友として常に手放すことがなかったと思います。禅は言葉を超えています。言葉の範囲が如何(いか)に狭いか、よくわかります。
最後は江戸川乱歩の③。これは中学2年生の時に、最初に読んだ乱歩の少年探偵団もので、その後、乱歩の少年ものの探偵小説は全部読み、今年90歳になっても、本棚から引っ張り出して読んでいる。いつまでも少年時代に留(とど)まっていたいのだろうか。
小説家 吉川トリコさん
①荒木飛呂彦の漫画術(荒木飛呂彦著、集英社新書・1100円)
②言語化するための小説思考(小川哲著、講談社・1210円)
③スクリプトドクターの脚本教室・初級篇(三宅隆太著、新書館・2530円)
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夏休みの自由研究に創作をしたいと考えているなら読んでおいたほうがいい三冊。①こんなに手の内を明かして大丈夫ですか?と心配になるほど、荒木先生の創作術が惜しげもなく披露されています。特にキャラクターの「身上調査書」は創作をする人なら一度は試してみてほしい。②ものすごく頭のいい人が、凡人たちにもわかりやすく「小説」というゲームのルールを解説してくれている本。これを読むだけで、小説を書くのも読むのもちょっとうまくなります。③もし私が創作教室を開くとしたらテキストにしたい本。というかこれさえ読めば創作教室に通う必要などないかもしれません。物語を徹底的に分解し、その構造を理解することで、自分の創作に必要なものが見えてきます。