第39回三島由紀夫賞・山本周五郎賞と第50回川端康成文学賞の贈呈式が6月26日、東京都内で開かれた。3人の受賞者はそれぞれに自作を振り返りながら、今後の執筆への意欲を示した。
三島賞を受けた豊永浩平さんの「はくしむるち」(講談社)は、生まれ育った沖縄を舞台にした長編。受賞スピーチで、23日の「慰霊の日」に東京で開いたワークショップでのエピソードを語った。沖縄にあまり興味がなかったという老人が自著を読み、話をしたいからと訪ねてきたという。
「受賞作の大きなモチーフであるウルトラマンの脚本家、金城哲夫さんはよく日本と沖縄の架け橋になりたいと言っていた。彼の名を出すのはおこがましいですが、沖縄の外部にいる人に自分の小説が届いたんだなと単純に感動した。書いてよかったなと思います」
山本賞の蝉谷(せみたに)めぐ実さんの「見えるか保己一」(KADOKAWA)は全盲の国学者、塙保己一(はなわほきいち)を新たな視点で描いた。初めて実在人物を取り上げた歴史長編で、「自分の都合のいいように保己一を解釈していないか、悩みながら書いた」と話した。
「小説がすごく好きだけど、すごく恐ろしいとも思っています。一文が人を傷つけるかもしれないし、でも同時に救うかもしれないところがある。だからこそ悩みながら今後も書き続けていきたい」
川端賞を受けた古川真人さんはデビュー作以来、長崎の島の一族「吉川家」の物語を書き続けてきた。受賞作「近づくと遠ざかる船」(「文学界」2025年9月号)もその一編だ。
「そろそろネタがなくなりそうなものですが、家族という小さな世界は案外と書くことが多い。わからないことがいろいろと出てくる。そのわからなさを底の底まで突っついていけば、いずれ外の大きな世界とつながるんじゃないか。そう信じて底に潜っていくための力を授けてもらった。これからも書いていくつもりです」(野波健祐)=朝日新聞2026年7月1日掲載