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講評のポイントは? 芥川賞「ゾンビ回収婦」、直木賞「けんぐゎい」

芥川賞の受賞が決まった小砂川チトさん(右)と直木賞の受賞が決まった朝倉かすみさん=井手さゆり撮影

 15日に決まった第175回芥川賞・直木賞の受賞作は、どのように評価されたのか。選考委員の講評から振り返る。

 芥川賞に決まった小砂川チトさんの「ゾンビ回収婦」(講談社)は、AIに仕事を奪われて解雇された女性が、仮想現実の世界をさまよう物語。選考委員を代表して講評を述べた奥泉光さんによると、最初の投票で鈴木涼美さんの「悪い血」、八木詠美さんの「アンチ・グッドモーニング」を含めた3作に絞られ、最終的には「ゾンビ」「悪い血」の2作について議論した上で結論が出たという。

 「ゾンビ」は虚構の世界を組み立てる力強さを高く評価されたのに対し、「悪い血」は主人公の回想にリアリティーがある一方、過去の自分についての思弁がうまく絡められていないという意見があった。八木さんの力量を認める声も多かったが、終盤の幻想的な展開がやや定型的だとの声があったという。

 直木賞は朝倉かすみさんの「けんぐゎい」(光文社)に決まった。世間の「圏外」とされた女性ふゆが主人公。主人に手込めにされて妊娠するが、ある女医者と出会ったことで、女の生と向き合い、力強く生きていく時代小説だ。

 講評した辻村深月さんによると、最初の投票では蝉谷めぐ実さんの「見えるか保己一」と同点だった。「けんぐゎい」の後半部分については、時代考証の視点から疑問の声もあったが、ふゆが最後に見た夢のようなものとしても読めるのではという意見により、2度目の投票で満票にまとまった。辻村さんは、つらい描写があるものの「それを凌駕(りょうが)するパワーと祈りが後半に用意されている」と評した。一方、「保己一」は野心作だが、保己一がどのように学問研究をしていったのかという部分をもっと読みたかったという意見が出て、2作授賞にはならなかった。

 候補入りで注目を集めた若林正恭さんの「青天」は、「伸びやかな小説で、光る表現が多くある」と評価された一方、初めての小説でもあり、この先どのようなものを書くか見てみたいという意見が多く出たという。(編集委員・柏崎歓、堀越理菜)=朝日新聞2026年7月22日掲載