「ジェンダーで学ぶ歴史学」/「〈帝国〉と身体」書評 個人の生活から世界の統治問う
ISBN: 4790718069
発売⽇: 2026/4/3
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ISBN: 4560024979
発売⽇: 2026/2/26
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「ジェンダーで学ぶ歴史学」 [編]弓削尚子、兼子歩/「〈帝国〉と身体」 [編著]山口みどり、周東美材
歴史を「ジェンダー」の視点から捉え直す試みは、単に女性の足跡を追うだけでなく、従来の歴史記述そのものを再構築する営みに他ならない。『ジェンダーで学ぶ歴史学』と『〈帝国〉と身体 ジェンダー史からの問い』の2冊は、ジェンダー史の基礎から応用へと読者を導く格好の伴走書だ。
まず基本は前者の『ジェンダーで学ぶ歴史学』。本書はフェミニズムや家父長制などの基礎概念を正確に押さえ、「男らしさ」「資本主義」「労働」など15の重要テーマを網羅する。女性史の枠にとどまらず、既存の社会制度や価値観がいかにジェンダー化されてきたかを平易に解説。歴史学にこそ、ジェンダーの視点が不可欠であることを説く。最良の入門書といえよう。
以上を踏まえた上で、前者を専門的に掘り下げた発展版として位置づけられるのが、後者の『〈帝国〉と身体』である。本書は、近現代国家が人びとの生命や身体を管理・統制する「生政治」の観点から、マクロな帝国の支配構造を解き明かす。衣服・健康・体育、そして性暴力を通じて、いかに個人の「身体」というミクロな領域が規律化され、搾取されてきたかを鋭く告発するのだ。前者で学んだ「ジェンダー規範が作られる仕組み」が、植民地主義という巨大な暴力、または境界を超える移動の中でいかに実践され、強化されたかを、具体的な歴史事象から鋭く照射するのである。あのジャニーズ性加害問題もこの文脈で把握される。
双方を地続きで読むことで、ジェンダーという権力作用が、個人の内面や生活(ミクロ)から、世界を揺るがす統治システム(マクロ)へとどう繫(つな)がっているのか、そのダイナミックな構造が見事に浮かび上がる。現代歴史学のパラダイムシフトを体感しつつ、現代社会の歪(ゆが)みを把握し、そこからさらに一歩踏み込んで、その歪みを問い直すような視座を得るために、この二段階の読書体験は頗(すこぶ)る有効である。
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ゆげ・なおこ 早大教授、かねこ・あゆむ 明大准教授▽やまぐち・みどり 大東文化大教授、しゅうとう・よしき 学習院大教授