ふと思い立ち、先日、人生ほぼ初ライブに参加した。昨年、デビュー四十周年を迎えたヘヴィメタルバンド・聖飢魔Ⅱのライブである。
私は普段、音楽をほとんど聞かない。ライブもほぼ未経験だ。それが何故いきなり聖飢魔Ⅱか? 正直に告白すれば、自分でもよく分からない。ただ半年前、「一度ちゃんと聞いておきたい歌手さんはいないの?」と聞かれた時、どういうわけか、「デーモン小暮閣下かなあ……」との答えが口を突き、我ながら驚いた。いいじゃない!と言われて調べると、遠方で講演をお引き受けしている翌日、同じエリアでライブがあると分かり、抽選に申し込んだ。私でも存在を知る伝説的グループである。どうせ取れまい……と諦めていたところ、意外にも当選してしまい、少なからず狼狽(ろうばい)した。
しつこいが、人生ほぼ初ライブである。しかも申し訳ないことに、聖飢魔Ⅱについてはよく知らない。ヘヴィメタルも同様だ。デーモン閣下のことは、小さい頃からテレビで時々お見かけしていたけれど。
せめて事前にアルバムを聞こうと思ったが、そこは長い歴史を誇る聖飢魔Ⅱ。予習せねばならぬことが多すぎ、どこから手をつけるべきか分からない。頑張りはしたが予習不十分との思いを胸に訪れたライブは、結論から言えば大変楽しかった。音楽を理解していない私にもその楽曲は圧倒的で、ああ、これを聞こうと思った自分の勘は正しかったのだなと考えた。これだけ無知な私が楽しいのだから、聖飢魔Ⅱに詳しい方には更にであろう。元の知識が圧倒的に足りないため、何がどうよかったのかをうまく言語化できないのが、モノカキとして無念である。
なお当日は席が前の方だったら周囲のノリについていけずに困りそうと不安だったが、なんと最上階の後ろから二列目。ヘヴィメタど素人にはもってこいである。最初から最後まで誰かが見ているかのような一晩は、ライブ初心者への天――いや、地獄の配剤だったのかもしれない。=朝日新聞2026年8月5日掲載