ペンギンが好きだ。キャラクター化された彼らも、生物そのものも、共に愛(いと)おしい。長崎には世界に生息するペンギン十八種のうち九種を飼育し、飼育種数世界一を誇る「ペンギン水族館」がある。展示空間は無論、時期次第では近くの浜にペンギンが放されており、ここに行くと瞬く間に時間が溶ける。ペンギンを触る機会に恵まれたのもこの施設で、感触は濡(ぬ)れたナスそっくりだった。
一方、パンダも好きだ。ただこちらは彼らを元にしたキャラクターを可愛いと思う一方、生物としてのパンダにはさほど関心が持てない。嫌いではないし、彼らが多くの人々に愛される理由も分かっている。ペンギンと比べ、私の中で「好き」の量が乏しいだけだ。
先日、東京駅の構内であるTシャツブランドがイベント販売をしており、ふとのぞいて驚いた。十年ほど前に買い逃して、ずっと悔やんでいたTシャツがそこにあった。パンダが豆大福を食べている柄で、どれがパンダでどれが豆大福やら分かりづらい点が特色だ。実は私は長年、そのブランドの通販サイトにアクセスして、同じシャツを探していた。だがすべて空振りに終わっていた品にここで再会できるとは。
人が何かを好ましいと思うポイントは複数ある。パンダを例に挙げれば、柄、生態、動き方、大きさ……私はパンダの生態には惹(ひ)かれないが、白黒模様はお気に入りらしい。シャツを手に素早くレジに向かいつつ、そんな己に改めて驚いた。
何かを丸ごと好きになる必要はない。ただ、一つの対象の中で少しでも気になるポイントを見付けられれば、いいなと思うものは増えていく。こうもパンダ柄を愛する私は、そのうち生物としてのパンダへの関心を抱くかもしれないし、似た模様の生物を好きになる可能性もある。そんなわけでパンダとよく似た柄の豆大福を、今日はおやつに買ってみた。今はそれほどではないが、もしかしたらパンダが縁で、これを大好物と感じる日も来るかもしれない。=朝日新聞2026年6月10日掲載