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凪良ゆう、瀬尾まいこ、坂木司、一穂ミチ、三浦しをん著「本屋さんのある街で」 人生が交差する町の止まり木

 現在、新刊書店が一軒もない自治体は、全自治体の二九%になるらしい。『本屋さんのある街で』というタイトルは、非常に暗喩的だ。

 アンソロジーに登場する五つの書店の形態はいわゆる町の本屋だ。今、増えてきている取次(本の問屋)を通さない独立系書店ではなく、旧来の仕入れ方法で営業する本屋の物語が展開される。そういう私も平成十六年にその方法で個人書店を創業した一人だ。アンソロジーの一篇(いっぺん)「手に取って見てみろよ」(坂木司)には、取次の店舗開発担当者と店づくりを話し合う場面がある。そのやり取りはまさしく私が二十二年前に経験した時間がそこに再現されていた。

 また「小鳥たち」(凪良〈なぎら〉ゆう)、「見晴らし書店の一日」(三浦しをん)では、年配者の常連たちとの触れ合いや、本の配達先での独居者へのセーフティネットの役割などが描かれる。

 週刊誌もエロ本も参考書もベストセラーも定期講読もマニアックな本も、それら全てに応えられるのは、やはり取次を通した町の本屋だ。つまり近所の本屋。

 かくいう私の本屋も名前は本屋然としていないが、令和の町の本屋なので、前記のラインナップはすべて対応可能だ。また、市内全域を車で一冊から配達している。毎回、大量に買ってくださるお得意さんはもちろん、ほぼ毎週配達する美容院や足が悪くなり店まで来られなくなった方など、インターネットを使えない、もしくは使いたくない人たちによって当店の配達需要は支えられている。

 二十年以上、店を続けていると常連さんたちの人生が垣間見えてくる。この本の中で作者たちは様々な言葉で本屋を表現する。止まり木、公園のベンチ、人が集まる場所、本を読むきっかけの場、居場所。

 本屋は特別な場所であってはならないと思う。=朝日新聞2026年9月12日掲載

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 文春文庫・770円。26年5月刊。6刷6万6千部。担当編集者は「雑誌の書店応援企画の趣旨に人気作家が賛同してくれたのが始まり。店頭で熱く推してくれた書店も多い」。新刊書店のない自治体のデータは出版文化産業振興財団調べ。