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彬子女王・著「新装版 京都 ものがたりの道」 「見られる街」に新たな視点

 住んでいる者が仰天するほど、京都という町は人気ものだ。情報誌は毎年春秋、京都特集を組み、「京都」を肩書きに全国相手の商売をなさるブランドショップも数多い。それは書籍についても同様で、この街をひもとく書物は数知れない。面白いのは様々な分析を経てもなお、京都が常に新しい視点を人々に提示し続ける事実で、ことに本書は京都に居を構えた筆者の純粋な好奇心でこの街を捕える。

 京都市中心部を碁盤の目状に走る大路小路は、住民には文字通りの生活道路であり、通りごとの個性は知りつつも、暮しの利便性が先に立つ。だが筆者はこの街に根を下ろしつつある新しい住民の立場から、生活の場たる道を通じて街を見る。観光客には新たな視点を、京都に暮らす者には洛中洛外を問わず等しく道を切り取る視座を提示する。その多面性は東京からオックスフォード、京都へと居を移した筆者の来し方そのものとも重なるものだ。

 ところでわたしは最近、京都=テーマパーク説を唱えている。舞妓(まいこ)さん、抹茶、神社仏閣……京都を隅々まで楽しもうとなさる方にとっては、京都のすべてが観光のネタと映り、京都の地方都市としての性格は二の次にやられているのではというものだ。そんな京都を描く本書が長く読まれ続ける理由の一つは、京都に今も日々親しみ続ける筆者の姿が、読者からすれば京都を知りたい己自身に重ね合わせ得るからとの点があるだろう。そしてもう一つ、読者の中には京都に居を移したプリンセスを、テーマパーク・京都に降り立ったパークの「お姫様」と捉える方もおいでなのではないか。それは京都が常に「見られる街」であることの証左であり、この地の拭い難い宿命を物語る。本書が多く読まれる事実は、京都に街としてどうあるべきかの問いを突き付けている。=朝日新聞2026年8月29日掲載

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 毎日新聞出版・1430円。24年7月刊。16刷11万6千部。新聞連載エッセーをまとめた単行本は16年刊。新装版でも加筆した。「東京と京都を行き来する生活を送られている著者らしい、ひと味違った視点が好評です」と担当編集者。