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ガブリエル・ライオン・著「筋肉が全て 健康・不老・メンタル、人生のすべてが変わる唯一の方法」 タンパク質が重要なのは……

 筋力トレーニングさえ行えば健康や人生が上向くと説く内容を想像させる題名だが、運動の具体的な事に触れているのは全10章中第9章と付録の一部分だけであり、それ以外は専ら、タンパク質の重要性について書かれている。著者の主張をまとめれば、糖尿病や心血管疾患、肥満などを改善するには筋肉量が必要であり、食欲の暴走を防ぐためにも動物性タンパク質を多めに摂取し運動せよ、というものだ。〈体重を減らすには、炭水化物1に対してタンパク質を1以上摂(と)るのが理想的〉と。

 私は職業柄運動不足にならぬよう週に二~三度ジムで筋トレし、贅肉(ぜいにく)を落とすため減量本を色々読んできた。本書も、どのような情報が信頼に足るかエビデンスの階層を説明したうえで持論を展開しているのだが、構成も主張内容も似た“この手の本”は溢(あふ)れている。長寿に比重をおいた本では、バッタの実験等を通して、タンパク質中心の食事だと個体としては長寿スイッチがオンにならず早く死ぬなどと主張している。つまり、医学者達(たち)が各々(おのおの)違ったことを主張しているので、あなたはどの宗派に入信しますか?という話なのだ。

 とはいえ、タンパク質の重要性をここまで細かく説明した一般書も中々(なかなか)ない。影響された私はスーパーへ行き、赤身が多い牛肉や豚肉、鮮魚等を沢山(たくさん)買った。その他の食材も含めて八〇〇〇円以上はかかる。我が家ではそれらが三日でなくなる。安く済ませようにも、鶏肉だって最近は高い。すると“良質な動物性タンパク質”を多く摂る食生活にも気が引け、ご飯が多めの食事に戻る。本書で提唱される食事を今後の人生で実行し続けられる人達が、どれほどいるのだろうか。筋トレは気合でどうにかなる。しかし食事は、経済が関わってくるから気合ではどうにもならない。=朝日新聞2026年9月5日掲載

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 御立英史訳、ダイヤモンド社・2420円。26年3月刊。8刷10万部。「筋トレだけでなく、栄養や運動の効果をエビデンスをもとに解説した点が評価されている。タイトルはマッチョだが、中身はしっかりしている」と担当者。