森山大道・鈴木一誌「絶対平面都市」書評 世界の謎の集積を可視化
評者: 大竹昭子
/ 朝⽇新聞掲載:2017年01月22日
絶対平面都市
著者:森山 大道
出版社:月曜社
ジャンル:芸術・アート
ISBN: 9784865030372
発売⽇: 2016/11/12
サイズ: 19cm/432p
絶対平面都市 [著]森山大道・鈴木一誌
森山大道ほど東京中を撮っている写真家はいないだろう。小型のデジカメを片手に「狩人というよりもスリに近い」感覚でストリートをスナップして歩く。
できた写真は遠近が消え平たくペラっとしている。彼の求めるこのペラペラ感に何が潜んでいるのか、写真に詳しいブックデザイナー鈴木一誌が対話した。
森山の発言はつねにブーメランのように同じ場所に戻ってくる。「なにも写さなかったんじゃないか」という自問と「こうしちゃいられない」という焦り。
撮る瞬間は路上の人が石ころに見え、「石ころどうしの同体感」に重力が消えて宙に浮いているような感覚になるが、終われば「いったいなにを見ようとしてるんだろうか」という疑問に苛(さいな)まれる。
そうした無意識と自意識のはざまを行き来する言葉の彼方(かなた)から、写真の不思議さが立ち上がってくる。世界を理解するのではない。世界が謎の集積であることを可視化するのが写真なのだと。