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異邦人の痛み ヒーローに重ね 冬木透「ウルトラセブン」音楽担当

写真・浅野哲司

 ウルトラセブン誕生から50年だそうですね。今の子どもたちも、曲が流れると「セブン、セブン、セブン!」と一緒に歌ってくれるようです。うれしいというより、怖いですね。作曲家という仕事の責任の大きさを感じます。
 「一歩深く踏み込んだ新しいヒーローを」と言い出したのは円谷(つぶらや)プロの2代目社長、つぶゴンこと円谷一(はじめ)さん。実相寺昭雄さんも監督のひとりでした。2人とも音楽好きで、純な童心の持ち主。年も近く、やりやすかったですね。
 ウルトラマンは怪獣と闘いますが、セブンは侵略してくる宇宙人と闘います。私たち地球人も別の宇宙人から見れば宇宙人だし、何より主人公のモロボシ・ダン自身がセブンの仮の姿、つまり宇宙人ですよね。敵と味方の境界が、極めてあいまいなのです。このあいまいさが多様な想像力を喚起し、結果として強い思い入れを持たれるキャラクターへとセブンを育てたのではないでしょうか。
 「セブン」という作品には実は、当時の沖縄の空気も投影されているのです。放送開始は沖縄本土復帰の5年前。当時、復帰運動を扱ったフィルムに音楽をつける仕事を受けたことがあるんですが、それだけでも命の危険を感じてしまうほど、安易にこの問題について口にできる雰囲気ではなかった。沖縄の人々の多くが差別を恐れ、出自を隠していました。
 「セブン」の脚本家にも上原正三さん、金城哲夫さんという2人の沖縄出身者がいました。とても明るかったけれど、酒の席でも沖縄の話は一切しなかった。1週間に2、3回分撮るという忙しさなので、仕事以外の話をする余裕がないというのもあったのですが、とにかく僕らは彼らの痛みにできるだけ触れないように、でも、君たちの味方だと伝わるように、気遣って振る舞っていた。言葉にしなくても、みんなが沖縄問題を根っこにしてつながっていた。

敵と味方…割り切らぬ思考の種を

 僕自身も旧満州から引き揚げ、広島で7年暮らしましたから、被爆地への強い思いがある。実相寺さんも組織と交わるのが苦手な人間でした。みんなが異邦人としての痛みを、セブンに重ねて共有していた。セブンは疎外される少数者の葛藤を引き受けるヒーローでもあったのかもしれません。
 ダンも、地球の人々に仲間と思われているからこそ、自分がM78星雲から来た宇宙人だということを明かせずにいた。ですから、最終話でダンがアンヌにセブンであることを告白するシーンは極めて重要でした。できるならば目を背け続けたかった現実に、真正面から向き直る。そんな大切な瞬間を象徴する音楽なのだから、天と地がひっくり返るくらいの衝撃を与えるものでなければならない。
 悩み抜き、自分では書かず、シューマンのピアノ協奏曲イ短調の冒頭を使うことに決めました。ピアノの硬質の音色が高音でパパーンと響き、ダダン、ダダン、と崩れ落ちていく。鋭さと切実さをたたえたディヌ・リパッティの演奏がぴったりとはまりました。
 正体を打ち明けたダンに、アンヌは言います。「人間だろうと、宇宙人だろうと、ダンはダンに変わりないじゃないの」。これはそのまま上原さんと金城さんの心の叫びだったのかもしれません。
 子ども向けにつくっている、と感じたことは一度もありません。実相寺さんを筆頭に、戦争に奪われた少年時代を取り戻そうとするかのように、「セブン」に携わる誰もが真剣でした。ただ、敵と味方、正義と悪という風に簡単に割り切らず、すべての存在に多様な好奇心を持つことができる柔らかい思考の種を、言葉より先に子どもたちの感性に植えつけたいという思いだけは共有していたはずです。セブンがこれからも、平和を願う人々の「祈り」の結晶で在り続けてくれたら、と思います。(聞き手=編集委員・吉田純子)=朝日新聞2017年11月29日掲載

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