1. HOME
  2. 書評
  3. 「日本の夜の公共圏―スナック研究序説」書評 話がはずむのはなぜなのか

「日本の夜の公共圏―スナック研究序説」書評 話がはずむのはなぜなのか

評者: 椹木野衣 / 朝⽇新聞掲載:2017年09月10日
日本の夜の公共圏 スナック研究序説 著者:谷口 功一 出版社:白水社 ジャンル:産業

ISBN: 9784560095478
発売⽇: 2017/06/23
サイズ: 19cm/216,4p

日本の夜の公共圏―スナック研究序説 [編著]谷口功一・スナック研究会

スナックでは不思議と話がはずむ。酒を出す店ならほかにもある。やはり他に代えがたい魅力があるのだ。その数や全国で10万軒に及ぶという。
 ところが、スナックについての学術的な研究はこれまで皆無であった。それも無理はない。だいたい、酒とママとの会話とカラオケでなぜ軽食(スナック)なのか。法的にもあいまいなのだ。本書のキーワードを借りれば、スナックはどこまでも「二次会」的だ。だがどんな会合もたいていは二次会のほうが盛り上がる。なにを隠そう、本書評委員会も例外ではない……。
 あいまいさを排し、透明性を担保するのが昼の一次的な公共圏なら、そんな堅苦しさから解き放たれようと、人は外からは中が見えない夜の二次会のドアを引く。呑(の)んだくれるためではない。そこには一定の作法があり礼節が求められる。空理空論に終わりがちな「日本の公共圏」は、日夜スナックで花開いているのかもしれない。