スナック バス江(1) [作]フォビドゥン澁川
札幌の場末のスナック、その名も「バス江」。ネーミングからしてふざけているが、ママの名前だから仕方ない。氣志團の綾小路翔に似たバス江ママとチーママの明美が切り盛りするその店は、客にとって心のオアシス……というよりむしろ修練の場だ。
いきなりママが血まみれでカウンターに突っ伏してたり〈適度に共感できて且(か)つそれっぽい事言いやすい〉悩みの相談を強要されたり。店に押し入った覆面強盗をして「この人達オカシイよ!」と言わしめる傍若無人なイカレっぷりはモンスター級である。
そんな2人と、これまたモンスター揃(ぞろ)いの常連客たちが繰り広げるボケとツッコミの応酬は、まさにノーガードの殴り合い。人気ゲームや料理マンガの雑なパロディ、掲載誌「ヤングジャンプ」をネタにしたメタ的ギャグ、想像の斜め上(もしくは下)をいく投げやりなオチには、イラッとしつつも笑ってしまう。
一見客から常連になった会社員のように、うっかりハマると抜け出せない。各話タイトルが洋楽曲名になっているのがムダにおしゃれ。おまけのボツ新連載案が異様に面白そうなのも底知れなさを感じさせる。さあ、勇気を出して扉(ページ)を開こう!=朝日新聞2018年3月11日掲載