下町ボブスレーの挑戦―ジャマイカ代表とかなえる夢 [著]細貝淳一、奥田耕士
下町ボブスレーは東京都大田区の町工場の経営者たちが技術力を世界に発信するため、ボブスレー競技のソリを開発・製作するプロジェクトだ。だがソチ五輪直前、日本代表チームには不採用に。「あきらめなければ、いつか夢は叶(かな)う」と平昌(ピョンチャン)五輪を目指した。ゼネラルマネジャーと事務局役が綴(つづ)る復活の軌跡だ。
奮闘するメンバー。多くの部品を無償で製作する100社を超える町工場。資金援助を続けるスポンサー。協力を惜しまない支援者たち……。一方、外国製との比較テストで再度不採用を決めた競技団体の日本連盟。役者が勢揃(せいぞろ)いするなかで、もう一方の主役はジャマイカ代表チームだ。
1988年のカルガリー五輪に常夏の国から参加。数々の苦難を乗り越えたドラマは映画「クール・ランニング」のもとになった。下町ボブスレーは五輪参戦の夢を境遇が似たジャマイカ代表に託す。
五輪出場のために全霊を注ぐ下町の人々に、涙を流す女子選手。資金不足、ソリの故障など、次々苦難が押し寄せるジェットコースター的展開に、一喜一憂させられる。
出場国は未決定だが、平昌の地に彼らが立っていてほしい。読者も夢に巻き込む悲喜こもごものドキュメントだ。=朝日新聞2018年1月14日掲載