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「人生を変えるクローゼットの作り方」 90歳、客に最適な服を選ぶ専門職

人生を変えるクローゼットの作り方 [著]ベティ・ホールブライシュ、レベッカ・ペイリー

 ニューヨークは五番街に、上流顧客が集まる高級デパート「バーグドルフ・グッドマン」がある。そこにいるのは、90歳にして活躍するパーソナルショッパー、ベティ・ホールブライシュ。本書の主人公であるベティは、得意客の要望に沿って最適な服を選び、着こなしを助言する専門職。ほかならぬ彼女自身が切り開いた職能だ。
 裕福な家庭で育ったベティは、金銭的に何不自由のない人生を送っていたが、結婚生活が破綻(はたん)し、40代にして初めて人に雇われる。この挫折が転機だった。相手の役に立つ、という仕事の喜びに目覚めた後は、持ち前の生命力で自立の道をひた進む。
 そんな彼女の言葉は、自他双方に率直で辛辣(しんらつ)だ。たとえばこんな一節。「絶えず文句ばかり言っていたら、昔はよかったと言ってるただの老いぼれとなり、職を失う」
 終身雇用や年金制度が危機に瀕(ひん)する一方で、「100歳社会」がいわれる今。学校を出て、40年働いて、穏やかな引退生活といった人生モデルが根本から揺らいでいる。
 こんなはずでは……と愚痴をこぼしても始まらない。前を向いて働けばいい。もやもやと募る不安を、ベティが痛快に吹き飛ばしてくれる。=朝日新聞2017年12月3日掲載